新型コロナウイルスに起因する調達契約不履行への対応

行政院公共工程委員会(以下「工程委員会」という)は2020年3月6日に工程企字第1090100202号解釈書簡を公布し、同書簡において、メーカーが「新型コロナウイルス(COVID-19)」感染症の蔓延により調達契約を履行できない場合における法律上の処理方法を説明した。

上記書簡の重要なポイントは以下のとおりである。

(一)調達機関とメーカーが工程委員会の公布する各種政府調達契約の様式に基づく調達契約を締結している場合においては、メーカーが伝染病予防治療法第3条所定の法定伝染病(例えば新型コロナウイルス)により期限どおりに契約を履行できないときには、メーカーは関連する証拠を提出して調達機関に対し契約履行期限の延長を申請することができ、契約を履行できないことが確定したときは、調達機関は契約責任を免除することができる。

(二)調達機関とメーカーが工程委員会の公布する各種政府調達契約の様式に基づいて調達契約を締結していない場合であっても、メーカーが新型コロナウイルス感染症の蔓延により期限どおりに契約を履行できないときには、調達機関は工程委員会の公布する「調達契約要項」第49条(機関およびメーカーが天災事変などの不可抗力または契約当事者の責めに帰すべからざる事由により、期限どおりに契約を履行できない場合、契約履行期限を延長することができる。契約を履行できない場合、契約責任を免除することができる。)に基づいて契約の変更を行うことができる。

(三)新型コロナウイルス感染症の蔓延により引き起こされた調達契約の履行をめぐる紛争については、調達機関とメーカーは紛争処理への協力を工程委員会に求めることができる。

新型コロナウイルスの感染拡大がなお続いていることから、多くの会社や工場では通常通りの運営や生産をすることができず、また、これによりさまざまな契約違反の問題が生じている。上記は調達契約不履行に関する対応策であるが、一般的な契約においても一定の対応をとることは可能であると解されるため、必要がある場合には早めの対応が望まれる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修