刑事審判への参加

立法院は7月22日、三読会において「国民裁判官法」(以下「本法」という)を可決し、2023年1月1日より、人民とキャリア裁判官が共同で「国民裁判官法廷」を構成し、特定の刑事事件を審理することとなった。

本法第5条によれば、少年犯罪と麻薬・覚醒剤事件を除き、法定刑が10年以上の懲役である罪または被告人の故意の犯罪により死亡が引き起こされた事件については、原則として、いずれも選出された6名の「国民裁判官」と3名のキャリア裁判官が共同で審理を行わなければならないとされている。
また、本法第12条によれば、年齢が満23歳であり、かつ地方裁判所の管轄区域において4ヶ月以上継続して居住している中華民国の国民でありさえすれば、国民裁判官に選出される資格と義務を有するとされている。なお、審判に参加する国民裁判官に対し、裁判所は、日当、旅費および関連する必要な費用を支払う必要がある。

被告人の有罪または無罪の認定について、本法第83条によれば、3分の2以上の裁判官(国民裁判官とキャリア裁判官を含む。以下同じ)による同意の表決を得なければならず、3分の2に届かない場合、無罪またはその他の被告人にとって有利な認定が告げられなければならないと規定されている。また、被告人の刑期の長さについては、過半数の裁判官の表決が必要であり、死刑の場合に限っては、3分の2以上の裁判官の同意を得る必要がある。

一方で、国民裁判官が刑事事件の審理に参加する場合、本法の規定により、国民裁判官が審理の開始前に、被告人にとって不利な証拠資料を閲覧したことにより偏見を持つことを避けるため、検察官が起訴した際に、記録および証拠物を一緒に裁判所に送付してはならないとされている。
また、審判に参加する国民裁判官が、裁判官の評議の結果を漏洩した場合、本法第97条によれば、1年以下の懲役、拘役または10万元以下の罰金が科される。さらに、国民裁判官が賄賂を要求しまたは受け取った場合、本法第94条によれば、3年以上10年以下の懲役に処され、200万元以下の罰金を併科され得る。

本法が可決されるまで、台湾のキャリア裁判官などの数多くの法曹人員は、一般の人民は専門的な法律知識がなく、被告人または証人のパフォーマンスに騙されやすいことなどを主な理由として、人民が刑事事件に参加して審理することに反対していた。そのため、将来、国民裁判官が審理に参加するという新制度が順調に実施され、正確で、大衆の信任を得る価値のある判決が作成できるかについては、今後も注意深く見守る必要がある。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修