有効な遺言書をいかにして作成するか
台湾社会の注目を集めた台湾の著名な企業家、長栄集団総裁の故・張栄発氏の遺産相続紛争について、台北地方裁判所は先日、第一審判決を下し、張栄発氏の遺言書は有効であり、息子の張国煒氏が一人で140億台湾元の遺産を相続すると認定した。
本件の概要は以下のとおりである。
一、張栄発氏は生前、「封印のある遺言書」の方法で、全遺産を後妻との息子である張国煒氏に相続させることを決定していた。2016年に張栄発氏が亡くなった後、先妻との息子は張栄発氏が精神状態に問題のある状況で当該遺言書を作成したと考えたため、張国煒氏を被告とする、当該遺言書の無効確認訴訟を提起した。
二、台湾民法第1192条第1項では、「封印のある遺言書は、遺言書に署名した後、それを封印し、封じ目に署名して、二人以上の立会人を指定し、公証人に提出して、それが自身の遺言書であることを陳述しなければならず、本人の自筆でない場合は、さらに、清書した者の氏名、住所を陳述しなければならず、公証人が封筒表面に当該遺言書の提出年月日および遺言者による陳述を明記し、遺言者および立会人と共に署名する」と規定している。
三、本件の担当裁判官は関係する立会人、公証人を呼び出し、張栄発氏のカルテ資料および過去数年間の署名の筆跡を調査し、本件の遺言書が民法第1192条第1項の規定に適合していること、また、張栄発氏が意識の明瞭な状態で「封印のある遺言書」を作成したことを確認し、当該遺言書の有効性を認め、張国煒氏勝訴の判決を下した。
本件の特殊な点は、争点自体は複雑ではないものの、裁判所は審理にほぼ4年もの期間をかけてようやく第一審判決をまとめ上げたという点にある。
なお、上記判決に対して敗訴側の原告はすでに上訴を提起しているため、本件はさらに長引くものと予想される。
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【執筆担当弁護士】