離婚する時の未成年の子の親権

メディアの報道によりますと、著名卓球選手の福原愛氏の夫である卓球選手の江宏傑氏が、今年4月下旬に、裁判離婚を請求する訴状を高雄地方裁判所に提出したとのことです。家事事件法第3条第2項および第23条第1項によれば、離婚事件は強制調停事件に該当し、裁判官が審理する前に、先に裁判所の調停手続きを経る必要があります。このため、福原氏と江氏の離婚問題は、先に高雄地方裁判所の裁判官により調停が行われ、調停が成立しない場合は訴訟手続きに入り、裁判官により審理が行われ、判決が下されることになります。

なお、報道によれば、福原氏と江氏の双方とも離婚の意思を有していることから、本件の主な争点は「双方の財産をどのように分配するのか」と「2人の子どもの親権はどうなるのか」という2点になるものと考えられます。

前者に関しましては、今年4月の本コラムで、台湾法上、夫婦が離婚する時の財産はどのように分配するのかについて説明致しました。そこで、今回は後者に関しまして、ご説明したいと思います。

離婚の際の未成年の子の親権について、台湾法では主に次のような規定があります。

一、民法第1055条:「(第1項)夫婦が離婚する場合、未成年の子に対する権利義務の行使または負担については、合意により、一方または双方が共同でこれを引き受ける。合意しなかったとき、または合意が成立しないとき、裁判所は夫婦の一方、主管機関、社会福利機構もしくはその他の利害関係人の請求により、または職権により、事情を斟酌してこれを決定することができる。(第2項)前項の合意内容が子にとって不利であるとき、裁判所は主管機関、社会福利機構もしくはその他の利害関係人の請求により、または職権により、子の利益のために当該合意内容を変更のうえ決定することができる。」

      本条の規定により、福原氏と江氏の2人の子どもの親権の帰属に関しては、先に福原氏と江氏の協議により決定され、協議によって合意に達することができない場合には裁判官により決定されることになります。注意に値するのは、台湾法では、夫または妻の一方が子の親権を取得する以外に、夫婦が共同で親権を共有することも認められているという点であり、この点が夫または妻の一方が子の親権を取得しなければならないとされている日本法における状況とは異なります。

二、民法第1055条の1第1項:「裁判所が前条の裁判を行うに当たっては、子の最善の利益に従い、一切の情状を斟酌しなければならないものとし、特に次に掲げる事項に注意しなければならない。1、子の年齢、性別、人数および健康状態。2、子の意思および人格形成上の必要性。3、父母の年齢、職業、品行、健康状態、経済力および生活状況。4、子を保護し、教育・養育することに対する父母の意思および態度。5、父母と子の間または未成年の子と他の共同で生活する者との感情の状況。6、父母の一方に他方の未成年の子に対する権利義務の行使・負担を妨げる行為があるか否か。7、各エスニックグループの伝統・風習、文化および価値観。」

本件においては、女性側が子どもを残して一人で日本へ戻っているうえ、不倫を疑われる写真が少なからず日本で撮られており、また、男性側のモラルハラスメントの問題については現在のところ有力な証拠がないため、もし子どもの親権の帰属について合意に達することができず、裁判官により決定されなければならないとすれば、女性側にとって不利な決定がなされる可能性も十分にあると考えられます。

日台間の国際結婚紛争は、しばしば複雑な法的問題に発展しますので、正確かつ効率的に処理できるようにするためには、両国の法律に精通した法律の専門家に依頼する必要があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修