台湾法上の詐欺罪について
台北地方検察署は8月23日、有名建築会社の責任者であるAおよび不動産販売会社の責任者であるBを詐欺罪で起訴しました。2人は台湾の不動産業界において知名度が高いため、本件は大きな注目を集めています。
台北地方検察署の起訴概要は以下のとおりです。
A及びBは2010年、新北市深坑区において「帝品苑」建設プロジェクトを進めた際、当該建設プロジェクトの地下1階から地下3階までが全て駐車場であり、当該建設プロジェクトが有名な高級住宅「帝寶」とは無関係であることを明らかに知りながら、消費者に対し「『帝品苑』は地下1階にフィットネスルーム、ビリヤードルーム、親子プレイルーム、交流室、KTVなど豪華な施設がある」、「『帝品苑』は『帝寶』と同じグループの製品である」など不実の情報を提供して、消費者に真実であると信じさせ、深坑区の当時の市価の2倍以上の高値で当該不動産物件を販売した。
また、AおよびBは、その犯罪行為を隠すため、わざわざ「コミュニティ緑化基金」の名目で、不動産販売所得のうち2360万台湾元を管理委員会に提供し、さらに「地下1階の各種施設の設置を管理委員会の名義で委託すること」を要求し、本件が発覚した場合には管理委員会に責任転嫁しようとした。
AおよびBは上記の手段で5.3億台湾元の不法利益を獲得した。
2016年、新北市政府工務局は「帝品苑」の地下1階の公共設施が全て駐車スペースを占用した違法建築であることを発見し、使用の禁止及び全面撤去を要求し、これにより当該コミュニティの住民はAおよびBに対し詐欺罪による刑事告訴を行いました。
注目すべき点は、台北地方検察署が本件を受理した後、1人目の担当検察官が本件は単純な民事紛争に過ぎないと判断してAおよびBを不起訴処分としたが、被害者が不服を申し立て、当該不起訴処分は高等検察署によって破棄され、台北地方検察署の2人目の検察官に再捜査が任され、ようやく今年8月下旬に本件が起訴されたことです。
「詐欺罪」の法律上の根拠は、刑法第339条第1項(「自己又は第三者による不法な所有を意図して、詐術をもって他者をして本人又は第三者の物を交付させた場合、5年以下の懲役、拘留、50万台湾元以下の罰金を科し又はこれらを併科する。」)です。実務上、刑事上の詐欺罪が成立する場合、被害者が提起する民事求償も基本的に勝訴します。
台湾において、「帝品苑」のように駐車スペースなどの公共施設を不法に流用する建設プロジェクトは多く、本件の判決結果により、ほかの建設プロジェクトの住民が建築業者の責任を追及する可能性があります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】