台湾法上の「不当な競争制限行為」

 2021年9月、公平交易委員会(以下「公平会」といいます)が、有名なフードデリバリーサービスプラットフォーム「foodpanda」の行為は「不当な競争制限行為」に該当すると認定し、当該プラットフォームに対して課徴金200万台湾元を課しました。

台湾法上の不当な競争制限行為について、その主な法規の根拠は、公平交易法第20条の次の規定になります。
以下の各号の行為の一に該当して、競争を制限するおそれがある場合、事業者はこれを行ってはならない。

 一、特定の事業者に損害を与えることを目的とし、他の事業者に当該特定の事業者への供給、当該特定の事業者からの購入または当該特定の事業者とのその他の取引を断絶させる行為。

 二、正当な理由なく、他の事業者に対し差別待遇を行う行為。

 三、低価格で誘引することまたはその他不当な方法により、競争者が競争に参加することや競争を行うことを阻害する行為。

 四、脅迫、利益の提供による誘引またはその他不当な方法により、他の事業者に価格競争、結合・連合への参加を行わせず、または競争を垂直的に制限する行為。

 五、取引相手の事業活動を不当に制限することを条件として当該取引相手と取引をする行為。

今回、公平交易委員会は、foodpandaの以下の行為が上記の公平交易法第20条第5項の規定に違反すると判断しました。

一、foodpandaが、プラットフォームで掲載するメニュー価格は店内と同じでなければならないと提携飲食店に制限を課したこと。これにより、飲食店は、販売チャネルごとのコスト差異を販売価格に反映させることができなくなり、さらには、foodpandaにより開拓された顧客以外の店内飲食の顧客が、foodpandaに対する手数料を実質的に負担しなければならなくなるという不公平な結果につながる。

二、foodpandaが、「foodpandaを通じて注文した顧客は、飲食店まで自分で食事を取りに行くこともできる」との条件の受入れを飲食店に強制したこと。飲食店まで自分で食事を取りに行くことのできる顧客の大半が既存顧客であるため、これにより、foodpandaは食事を配達する運送コストを節約できることになるが、飲食店のために新規顧客を開拓していないにもかかわらず、依然として手数料を取得することができる。

三、このほか、foodpandaが、さらに、飲食店から取得した手数料をもって、飲食店まで食事を取りに行く消費者に補助金を出した(例えば、自分で取りに行けば10%オフになる)こと。この方式により、より多くの顧客が「foodpandaで注文+自分で食事を取りに行く」との消費方式を採用するようになり、foodpandaにより多くの手数料を取得させるが、飲食店の利益は損なわれる。

 多くの企業が「相手方が同意しさえすれば、取引条件はすべて自由に約定することができる」と誤解していますが、本件のように、実務においては、双方の合意を経た行為であっても公平交易法に違反する行為はありますので、慎重な精査が必要になります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修