業者によるくじ引きキャンペーンは不当な販売行為となるのか?

最近、「業者によるくじ引きキャンペーンが公平交易委員会(以下「公平会」といいます)により違法と認定され、課徴金を課されたが、裁判所はこれを適法と判断した」という事案がありました。

本件の概要は次のとおりです。

2020年に浄水器を販売するA社とレストランBがタイアップして「レストランBのアンケートに答えるとA社のくじ引き券がもらえる」というプレゼントキャンペーンを実施しました。このキャンペーンの景品は定価28800台湾元の浄水器で、くじ引きで当選した人は定価の10%、つまり2880元でこの浄水器を取得できるというものでした。その後、多くの一般消費者が「A社はくじ引きキャンペーンを口実にして商品を売りさばいている」、「A社は商品の価格をあらかじめ高く設定しておき、一般消費者を誘惑して騙し、2880元という価格で購入させている」などと公平会に通報しました。

2021年10月、調査の結果、公平会は、A社がくじ引きキャンペーンの名目で、そもそも取引ニーズがない一般消費者を呼び集め、一般消費者に心理的準備が少しもできていない状況において販促キャンペーンに参加させていることから、A社には、公平交易法第25条の「取引秩序に影響を与えるに足りる欺罔行為および明らかに公正さを欠く行為」に該当する、浄水器の不当な販売行為があったと認定し、同法第42条の規定に基づきA社に10万台湾元の課徴金を課すことを決定しました。

A社は公平会の処分を不服とし、公平会を被告として、公平会の当該処分の取消しを求める行政訴訟を台湾台北高等行政裁判所に提起しました。

2022年6月、同裁判所は、公平会の処分は違法であるとする、A社勝訴の逆転判決を言い渡しました。

判決書では、A社はくじ引きキャンペーンのポスターのはっきりと見える位置において、「当選者は10%の価格を支払うことではじめて浄水器を取得できる」といった内容を大きな文字ではっきりと表示しており、この内容は一般的な弁識能力を有する一般消費者に、くじ引きの景品は無料で取得できるのではなく、代価を支払うことではじめて取得できると認識させるに足りるため、A社には欺罔行為、重要な取引情報を隠蔽する行為または明らかに公正さを欠く行為はない、と指摘されています。また、同判決では、当選した一般消費者は10%の代価をもって浄水器を取得したいと思うかどうかについて、十分に検討し、決定する余地があり、当選したことと費用を支払うかどうかということには必然的な関係がないため、公平会の認定および処分は不当であり、取り消すべきであることを強調しています。

行政機関により違法と認定された後に、裁判所により逆転されるというこのようなケースは、実務において少なくありません。このため、行政機関から処罰を受けた場合において、その処罰が極めて不公正であると判断するときには、行政訴訟の手段を通じて自社のために正しい判断を改めて行ってもらうことも検討できるでしょう。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修