企業の営業秘密をいかにして保護するか

「営業秘密が従業員によって漏えいされたが、どの様に対処すべきか」というのは、弊所でもよく受ける質問です。秘密を漏えいした者の法的責任を追及するだけでなく、「営業秘密が外部に漏えいしないようにする」ことは、企業にとってより重要な課題です。

以下に、企業の営業秘密を効果的に保護する手段をいくつか提示します。

一、人員の管理を強化する。例えば、

1、従業員の入社時に、会社は、従業員と秘密保持契約を締結し、従業員の在職期間中および退職後の各種の守秘義務について明確に約定する。

2、従業員の在職期間中、会社は、営業秘密の保護に関する教育訓練を定期的に実施する。

3、従業員の退職時に、会社は、当該従業員に秘密保持契約の内容および義務を再度説明し、当該従業員に対しその保有するすべての営業秘密の返却、廃棄を要求する。

4、退職した従業員がもとの雇用主における雇用期間に知り得た営業機密を競合相手が利用しないようにするため、会社は、重要な職務に就く従業員と競業避止条項を締結し、退職後に競合相手に雇用され事業の性質が同一または類似の業務に従事してはならないことを当該従業員に要求する。

二、情報の管理を強化する。例えば、

1、会社は、各種の電子ファイル/書面による保存書類の機密レベルの分類および暗号化の措置を実施する。

2、会社は社内規則において、職務ごとにアクセス可能な機密情報を明確に規定し、営業秘密の無断複製、会社からの持ち出しを禁止する。

3、会社は、各種の保存書類のアップロード、ダウンロード、削除、移動、copyなどの行先を追跡・記録するために社内のコンピュータシステムに監視ソフトをインストールする。

また、従業員が競業避止条項に違反して競合相手に就職した場合、会社はもちろん当該従業員に対し訴訟を提起することができますが、訴訟には時間がかかりますので、企業の営業利益を保護するには間に合わないことは明らかです。そこで、損害の拡大を回避するために、訴訟前に「仮の地位を定める仮処分制度」を利用して裁判所に「従業員が競合相手に就職することを一定の期間制限する」仮処分を申し立てることで、自社の営業秘密が競合相手に掌握されないようにすることが可能です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修