未成年者の性的画像を所持した場合の法的責任

最近、台湾の著名タレントが児童および少年の性的画像(18歳未満の未成年者の性交またはわいせつ行為を内容とする動画)を所持していたことにより、台湾各界の人々から糾弾されました。

本件の概要は、タレントAが2013年2、3月に、台北市某所で、新人タレントの写真を撮影する機会を利用して、当該女性に対し、強制性交、強制わいせつ行為を行ったとして告発されたというものです。
台北地方検察署の検察官による捜査の結果、当該女性は本件の重要な情状に関して「覚えていない、記憶にない」と示し、また、事件発生後も通報や受診の記録が一切なく、Aが強制性交、わいせつ行為をしたことを証明する具体的な証拠がありませんでした。このほか、検察官がA宅から押収したパソコン、ハードディスク、メモリカードを精査しても、Aが当該女性を襲ったことに関する写真、動画は見つからなかったため、2024年4月初め、Aが強制性交罪および強制わいせつ罪を告発された部分に関しては不起訴処分となりました。

他方で、検察官によってAのハードディスクから児童および少年の性的画像ファイル7個が発見されたことから、検察官は、Aが児童および少年の性的搾取防止条例第36条第1項の「児童・少年の性的画像所持罪」(正当な理由もなく児童または少年の性的画像を所持した場合、1年以下の有期懲役、拘留に処し、または3万台湾元以上30万台湾元以下の罰金を科すもしくは併科する)を犯したと判断し、Aを2年の起訴猶予処分とし、また、120万台湾元を国庫に納付することおよび始末書を1通作成することをAに要求しました。

上記の起訴猶予処分が公表された後、台湾社会では、「Aは高い知名度を有する著名タレントだというのに、このような未成年者のポルノ画像を購入するとは、容認できない」とか、「現行法の罰則は軽すぎ、未成年者のポルノ画像を撮影、製作、取引する不法行為を有効に抑止することはできない」とか、幅広い議論や論評が行われました。メディアの報道によりますと、台湾の立法院は関連する法改正作業にすでに着手しているとのことです。

上記のとおり、今後台湾では、未成年者のポルノ画像に関する法的規制が強化される方向へ進むと考えられます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修