台湾法上の勾留

2024年9月5日、前台北市長で現民衆党の党首柯氏が、「京華城」をめぐり争いとなった事件により、台北地方裁判の勾留決定を受けたことは、台湾で大きな注目を集めました。

いわゆる「勾留」とは、台湾法上、次の二つに分けられます。

一、一般的勾留。一般的勾留とは、訴追、裁判または刑罰の執行が円滑に行われるようにするための保全手段を指します。刑事訴訟法(以下「本法」といいます)第101条では、被告人の犯罪の嫌疑が重大でかつ次の三つの条件を満たすとき、裁判官は被告人を勾留することができると定めています。柯氏はこれに該当します。

 1、逃亡しまたは逃亡する恐れがあると判断するに足りる事実がある場合。

 2、証拠を隠滅、偽造、変造し、共犯者または証人と共謀する恐れがあると判断するに足りる事実がある場合。

 3、死刑、無期懲役または軽くても本刑が5年以上の有期懲役の罪を犯し、逃亡、証拠を隠滅、偽造、変造し、共犯者または証人と共謀する恐れがあると判断するに相当の理由がある場合。

二、予防的勾留。予防的勾留とは犯罪を予防する措置であり、本法第101条の1に定められている放火、性犯罪、傷害、殺人など特定の犯罪のみに適用されます。被告人が特定の犯罪を繰り返し実行する可能性があり、かつ社会に危険をもたらす可能性があることを示す十分な証拠がある場合、裁判所は、再犯防止のために当該被告人を勾留する決定を下すことができます。

勾留期間については、本法第108条の規定により、事件起訴前の勾留期間は最長4か月であるため、検察官が裁判所に被告人の勾留を請求し許可を受けた場合、当該検察官は4か月以内にその事件の調査(被告人に対する起訴または不起訴の決定)を完了する必要があり、さもなければ、当該被告人は釈放されます。起訴後の勾留期間については、罪名の軽重および審級によって異なりますが、合計で5年を超えてはなりません。

勾留は法律上、被告人の身体の自由を一時的に拘束するものにすぎず、被告人に罪があることを意味するものではありません。とはいえ、近年、裁判所は勾留事件について厳しい審査基準を採用しており、つまり、被告人の犯罪の嫌疑が極めて高いと判断した場合に限り、裁判官は勾留を認めるため、勾留される被告人が最終的に無罪判決を受けた事件はそれほど多くありません。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修