台湾法上の「政治献金」
台湾の政治スター・柯文哲氏(前台北市長)が汚職の容疑で2024年12月26日に台北地方検察署に起訴され、28年6か月という重刑の求刑がなされたことは、台湾全土に衝撃を与えました。柯氏がかかわった不法行為には、広く注目を集めた「賄賂を受け取り『京華城』の土地の容積率を不法に引き上げた」事案のほかに、「政治献金横領および不実申告」の事案が含まれます。
政治献金に関する台湾法上の主な規定は次のとおりです。
一、「政治献金」とは、政治献金法(以下「本法」といいます)第2条第1号によると、選挙活動または政治に関連するそのほかの活動に従事する個人または団体に対し無償で提供される動産もしくは不動産、対価に見合わない給付、債務の免除またはそのほかの経済的利益を指します。但し、党費、会費またはボランティアの役務はこれに含まれません。
二、政治献金の限度額:本法第17条第1項によると、同一の政党、政治団体に対する一年間の寄附総額は、個人からの場合は三十万台湾元を超えてはならず、営利事業者からの場合は三百万台湾元を超えてはならず、人民団体からの場合は二百万台湾元を超えてはなりません。
三、政治献金の用途の制限:本法第23条第1項によると、政党、政治団体および選挙立候補予定者が受け取る政治献金の用途は、人事費用、宣伝、宣伝車両のレンタル、選挙事務所の賃借、集会、交通旅費、雑費、寄附者への返還、国庫金納付および広報費用などの項目に限られ、また、営利行為に従事してはなりません。
四、政治献金の申告:本法第20条および21条によると、政党、政治団体および選挙立候補予定者は、受け取った政治献金について収支帳簿および会計報告書を作成し会計士の監査・証明を受けた後、政府機関への申告を行うとともに、インターネット上で公表しなければなりません。
五、違反したときの刑事罰:本法第25条以下によると、政党、政治団体の責任者、選挙立候補予定者が本法に違反した場合には、五年以下の有期懲役などの刑事罰が科されます。
台北地方検察署の起訴状によると、柯氏が横領した政治献金は6234万台湾元もの巨額に達しており、また、監察院に対し申告を行った際に、不実の会計士監査報告書を提出したということです。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】