個人情報保護法の10月1日からの施行

台湾の個人情報保護法(中国語名:「個人資料保護法」)は2010年5月26日にすでに公布されているが、全ての産業、団体、 個人が適用を受けることから、多くの分野に影響を与えるものであるとして、各業界が一部の条文について難色を示したため、台湾政府は施行を遅らせていた。
しかし、本年8月30日、台湾行政院は個人情報保護法の一部の修正条文について可決し、かつ10月1日から正式に施行することを宣言した。
修正条文のうち、各業界が注目している点は以下の通りである。

  1. 本法第6条(本条の施行日は、行政院が別途定める)において、病歴が「特種個人情報」に追加され、原則としてこれを収集、処理又は利用してはならないとされているが、以下のいずれかの場合にはこの限りではないとされている。
    • 法律に明文の規定がある場合。
    • 公的機関が法定の職務を執行する又は非公的機関が法定の義務を履行するために必要であり、かつ適切かつ安全な保護措置を講じる場合。
    • 当事者が自ら公開し、又はその他すでに適法に公開されている個人情報。
    • 公的機関又は学術研究機関が医療、衛生又は犯罪予防の目的に基づき、統計又は学術研究を行うために必要であり、かつ情報について提供者が処理を行った場合。
  2.  意図的に営利を図ることなく、個人情報保護法の関連規定に違反した場合について、同法第41条第1項では、違反者に対し2年以下の有期懲役を科す等の刑事処罰が規定されている。同条第2項によれば、意図的に営利を図った場合の違反行為については、なお、5年以下の有期懲役及び100万新台湾ドル以下の罰金を併科することができるという刑罰規定が規定されている。

台湾行政院長の陳冲氏によれば、個人情報保護法は1995年の「EU個人データ保護指令」の内容を参考にして制定されたもので あり、本法の規定内容は個人情報の保護という趨勢及び産業の発展の必要性に合わせて、今後も適宜調整されるべきであるため、台湾法務部に対し施行一年後に 実施状況を検討し、かつ新興の科学技術、インターネット等のサービス技術、欧米諸国の最新の個人情報保護法の趨勢及び各業界の意見を参考にしてさらに検討 を行うよう指示した、とのことである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修