従業員と会社との法的関係
台湾新竹地方裁判所は2013年1月3日、2012年度労訴字第79号の判決を言い渡し、従業員と会社との法的関係が労働であるのか委任であるのかについては、従業員の職務名等を区別の基準とするのではなく、職務上の従属性、服従性等により判断しなければならないと判示した。
本件事案は、被告が正当な理由なく原告を解雇したとして、労働基準法の規定に基づき、原告が被告に対し60万新台湾ドルの解雇手当等を請求した事案である。被告は「原告の職務名は一般的な委任契約においてよく使用されている『支配人』であり、被告との関係は『労働関係』ではなく『委任関係』であるため、労働基準法は適用されない」と反論して、解雇手当の支給を拒んだ。
裁判所は審理の結果、次の通り判断した。
「従業員と会社との法的関係における労働と委任の区別において、労務提供者の職務名、職務内容、報酬の多寡等のみを判断基準とするのではない。労働契約では、従業員は職務上及び組織上、雇用主に従属し、雇用主の指示に対して強い服従義務を有する。
それに対し、委任契約は委任事務の完了を目的としており、また、委任契約では一定の事務の処理が委任され、委任者の授権の範囲内で、受任者は自らの裁量により一定の事務の処理方法を決定することができる。
本件において、原告の職務名は、一般的な委任契約においてよく使用されている「支配人」であるが、実際には原告は職務上、被告に対し強い服従義務を有し、かつ被告は原告の雇用にあたり、会社法における支配人選任の手続きを経ていないため、原告は会社法における委任された支配人でもない。従って、原告と被告の関係は労働関係であり、労働基準法が適用されなければならない。」
外国企業が台湾において従業員を雇用する際、「支配人」という職務名で契約する場合でも、雇用と判断され、労働基準法が適用されるケースがあることに注意する必要がある。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】