会社の法定代理人が会社名義で保証した際の当該会社の保証責任

会社法第16条の規定に基づき、会社は、他の法律に基づく場合又は定款に定めがある場合を除き、保証人になることができず、会社の法定代理人(董事長)が会社名義で他者と保証契約を締結した場合、法定代理人が自ら保証責任を負わなければならず、会社は保証責任を負わないとの判決が出された(2013年5月27日付けの台湾新北地方裁判所2013年度建字第45号民事判決)。

本件の概要は次の通りである。
原告A社は被告B社が発注した、プロジェクトを請け負い、双方は2012年7月にプロジェクト請負契約を締結した。

A社は、「本件プロジェクトが竣工され、かつ、検収の結果、瑕疵はないにもかかわらず、B社が支払を拒んだため、契約及び請負関係に基づき、B社に対してプロジェクト費用及び遅延利息の支払を請求する」と主張した。
B社はこれに対し次のように抗弁した。

B社は2013年6月に第三者である丙と注文者を丙、請負人をB社とするプロジェクト契約を締結した。B社の高級幹部である乙とA社の法定代理人である甲とは仲のいい友人であったため、甲はB社が請け負った丙のプロジェクトに鉄工の施工業者が必要であることを知り、C社を鉄工の施工業者として乙に推薦し、さらに甲は、C社がB社との契約に違反した場合にはA社が責任を負う旨の保証をした。

その後、C社はB社との契約に違反し、遅々としてプロジェクトは進まなかったため、B社はC社に対して60万新台湾ドルの損害賠償を請求したほか、A社に対してもB社の損害について保証責任を履行するよう要求した。

裁判所は審理の上、次の通り判断した。
「会社法第16条は、『(第1項)会社は、他の法律又は会社の定款に基づき保証を行うことができる場合を除き、いかなる保証人にもなることができない。(第2項)会社責任者は前項の規定に違反した場合、自ら保証責任を負わなければならず、会社がこれにより損害を受けた場合、賠償責任も負わなければならない。』と規定している。

本件では、A社の定款には保証することができる旨の記載がなく、また他の法律にもA社が保証することができる旨が規定されていないため、A社はいかなる者の保証人にもなることができない。たとえ甲が、A社・B社間の保証契約を締結していたとしても、甲が自らそのすべての責任を負わなければならず、A社は保証責任を負わない。よって、B社が敗訴との判決を下す。」

以上からすれば、取引の相手方会社から保証提供の申し入れがあった場合、保証が無効とならないよう、事前に当該会社の定款に会社が保証することができる旨の記載があるかどうか、又は他の法律において当該会社が保証することが認められているかどうかを確認すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修