一般の自家用車の運転手による「Uber」を通じた乗客送迎サービスの提供の違法性

「Uber」という名前を聞いたことがあるだろうか?
Uberとはアメリカの同名の会社によって開発されたアプリケーションソフトウェアである。その主な機能は、一般の自家用車の運転手にUberの提携運転手として登録してもらい、配車を必要とするその他の消費者(乗客)とマッチングさせ、マッチングが成功した場合、消費者の支払った乗車賃を運転手とUberが分け合うというものである。

このビジネスモデルは、運送を業としない車の所有者が乗客送迎によって収入を得ることを可能とさせ、また一般の消費者に対し安い価格で比較的高品質な運送サービスを受けられる機会を与えるため(例えば、多くのUberの運転手はベンツなどの高級車でサービスを提供している)、世界各国で歓迎されている。

ところが一般の自家用車の運転手は、自動車運送業を営むための許可を取得していないため、Uberを通じて乗客送迎サービスを提供し、報酬を得る行為は、台湾の法律に違反している。

先日、あるUberの運転手がその乗客送迎行為により交通部道路総局に検挙され、5万台湾ドルの過料および運転免許の2か月間の停止処分を受けた。その運転手はかかる処分を不服とし、交通部道路総局を被告として、行政訴訟を提起し、処分を取り消すよう求めた。

最高行政裁判所は審理後、2016年5月26日に16年度判字第264号行政判決を下し、Uber運転手の敗訴を認定した。認定の主な理由は以下のとおりである。

  1. 道路法第77条第2項によれば、同法に従って許可を申請せずに、自動車運送業を営んだ場合、過料が科され、またその営業停止が強制的に命じられ、かつ、その不法営業を行った車両のナンバープレートを2か月間から6か月間没収し、又は取り消すことができると規定されている。
  2. ここでの「営業」について、全体的かつ客観的な事実から見て、当事者が繰り返して実施する意図があった場合、たとえ1回だけ検挙されたケースであっても(初めて実施しすぐに検挙されたケース、および複数回実施し1回だけ検挙されたケースを含む)、それが営業行為であるという判断に影響をおよぼさない。
  3. 本件のUber運転手は乗客送迎行為について1回だけ検挙されたが、Uberウェブサイト上の「我々のコミュニティの乗客に市内で送迎サービスを提供するだけで、毎週報酬を得ることができる」、「乗車賃を稼ぐために、自らがボスとなって、自由にサービス時間を決められる」、「車が商売道具へと変わり、Uberによって簡単にお金を稼ぐことができる」などの文章およびUberの運営方式から見る限り、Uberに加入する運転手は、営利を目的としており、繰り返して実施する意図があり、当然のことながら営業行為に該当すると認めるのに十分であることが分かる。
    従って、本件運転手が事前に許可を得ずに運送の営業行為に従事したことは、当然のことながら道路法に違反している。

一般の自家用車の運転手がUberを利用して乗客送迎サービスを提供することは、政府当局の処罰を受ける可能性が高いため、そのような行為は差し控えるべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修