商品の価格を間違って表示した場合の対処方法

メディアの報道によれば、2017年7月、苗栗県のあるベビー用品業者の従業員が、販売価格が1000台湾元を超えるベビー用お風呂グッズセットの価格を、自社のショッピングウェブサイトにおいてうっかり間違って50元と表示したため、消費者が同ウェブサイトにおいて数千セットの商品を大量に買い漁る事態が発生し、これにより当該業者には数百万台湾元の損失が生じた。

当該業者の責任者は、「50台湾元での購入の注文を受け入れ、また、従業員の責任を追及しない」と表明したため、その寛容な対応が世論および消費者から高く評価された。

本件のように、従業員が商品価格をうっかり間違って表示した場合、台湾法上、解決方法がいくつかあるが、以下に代表例を2つ挙げる。

1.民法第154条には以下の通り規定されている。

(第1項)契約締結の申込者は、その申込みにより拘束される。但し、申込み当時に拘束を受けないことを予め表明した場合、又は状況若しくは事案の性質から当事者が拘束されることを意図していなかったと推定できる場合は、この限りでない。

(第2項)販売用の商品を販売価格を付して展示することは、申込みとみなされる。但し、価格表の送付は申込みとみなされない。

通常、本条第2項に基づき、売主が商品の価格を表示することは「申込み」とみなされ、消費者が購入する意思を有する「承諾」を表明しさえすれば、双方間で売買契約が成立することになり、売主は約定された価格で出荷する義務を有する。

しかし、本件は、ウェブサイト上で不特定の者に対し商品の価格情報を提供するものであることから、法律上、本条第2項但書の「価格表の送付」と解釈される可能性があるため、売買契約の成立可否は、売主に最終的な決定権がある。

つまり、当該業者は売買契約は不成立であると主張することも可能であったと解される。実務上、このような見解を採用する裁判所判決もある(苗栗地方裁判所民事法廷2012年簡上字第9号判決)。

2.民法第220条には以下の通り規定されている。

(第1項)債務者は、故意又は過失のいずれによるかを問わず、その行為について責任を負うものとする。

(第2項)過失に対する責任の程度は、その事件の性質によるが、その事件が債務者の利益の確保を意図したものではない場合、責任は軽減するものとする。

本件において、双方間で売買契約が成立したと判断されたとしても、売主の表示価格は合理的な価格をはるかに下回っており、かつ売主に悪意又は重大な過失もないと解されるため、たとえ当該業者が50元の価格で出荷することを拒絶したとしても、消費者に対し負う損害賠償責任は本条に基づき軽減して認定される可能性がある。

本件のように、企業が従業員のミスにより消費者に対し責任を負わなければならない状況は、台湾でも数多く存在する。類似の状況が発生した場合、できる限り早く法律専門家の意見を求め、その都度最適な解決方法を採用すべきである。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修