台湾法上の株式公開買付

「株券等の有価証券の公開買付(以下「TOB」という)」とは、企業が買付対象会社の不特定の株主に対しその株式を買い付ける申し込みを公開方式で行い、かつ「特定の価格で一定数の株式を購入すること」を承諾することをいう。

なお、台湾法上は、公開発行会社有価証券公開買付管理規則第2条第1項により、「有価証券集中取引市場又は証券会社の営業場所を経由せずに、不特定の者に対し、公告、広告、放送、電送情報、書簡、電話、会見、説明会又はその他の方式で有価証券を公開で申し込み、それを購入する行為」と定義されている。

台湾におけるTOBの有名な事例としては、台湾の上場会社である「中華開発金融控股公司」が2017年に別の上場会社である「中国人寿保険公司」の25.33%の株式を公開買付したことや、鴻海集団が18年に「帆宣系統科技公司」の51.12%の株式を公開買付した事例等が挙げられる。

TOB方式で他社の株式を取得する場合、以下のメリットが考えられる。

  1. 短期間で多数の株主から買付対象会社の株式を大量に取得することができる。
  2. 買付株式数の上限及び下限、買付価格、買付期間等、TOB条件の設定を通じて、買付人は、取引の期間及び金銭コストを事前にコントロールすることができる。
  3. 応募株式数が買付予定数に達しない場合、買付人はすでに応募した株主の株式を買い受ける必要はない。

日本企業を含む外国企業がTOB方式で台湾の上場企業の株式を取得する際の注意点は以下のとおりである。

  1. 買付対象会社の大株主がTOB方式でその株式を売却することに同意した場合、買付人である日本企業は台湾の法規に完全に合致する株式取引契約を作成、提出しなければならない。
  2. 経済部投資審議委員会から事前に許可を取得しなければならない。
  3. 金融監督管理委員会にTOB申請を行わなければならない。
  4. 公正取引委員会に「結合申請」を行う必要があるかを確認するため、事前に買付人及び買付対象会社の市場占有率を検討しなければならない。
  5. 買付対象会社の株式価格に対する影響又はインサイダー取引等の問題が生じないよう、TOB情報の公開前は秘密を厳守しなければならない。

TOBは手続きが複雑であり、準備すべき文書が多いため、TOBを行う際には、TOBの経験が豊富な弁護士に問い合わせ、TOBの代理人として委任すべきである。なお、弊所では、日本企業の台湾での複数のTOB案件を処理した経験を有する。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修