台湾会社法改正のポイント

7月6日、台湾の国会(立法院)の第三読会は会社法の改正案を可決した。今回の改正範囲はここ20年で最大のものであるため、各界から大きな注目を集めている。

今回の改正のポイントは以下の通りである。

  1. 従業員のボーナスについて:現行法では、従業員のボーナスは自社の従業員にしか支給することができないが、改正法では、親(子)会社が黒字の時は、子(親)会社の従業員にもボーナスを支給し、企業の人材招致、人材流出防止の融通性をアップさせることができるようになる。
  2. 董事の数について:現行法では、株式会社の場合は少なくとも3人の董事を置かなければならないが、改正法では、経営コスト削減のため、通常の株式会社は3人の董事を維持することもできるし、1人又は2人のみ置くことも可能になる。ただし、上場会社は証券取引法が適用されるため、会社法改正後も5人以上の董事を置かなければならない。
  3. 董事会の招集について:現行法では、董事会はface to faceの形で開催するかテレビ会議の形で行わなければならないが、改正法では、董事会の意思決定効率をアップさせるため、実際の開催なしで書面決議を行うことができるようになる。
  4. 利益分配について:現行法では、利益分配(すなわち現金配当および株式配当)は1年に1回しか行えず、かつ株主総会における決議を経なければならないが、改正法では、会社は1年に2回利益を配当することができるようになり、かつ董事会における決議を経るだけでよく、株主総会を開催する必要はなくなる。
  5.  額面株式又は無額面株式の発行について:現行法では、「閉鎖会社」以外の会社は額面株式 (例えば1株あたり10元のように、株券上に1株あたりの金額を記載する株式。)を発行しなければならないが、改正法では、額面株式か無額面株式のいずれを発行するかを会社が自由に決められるようになる。
  6. 外国会社について:現行法では、外国会社は台湾から承認されなければ適法な法律主体となることができないが、改正法では、外国会社は台湾で支店登記さえすれば営業することができ、承認手続きが不要となる。
  7. 外国語の社名について:現行法では、会社は外国語での社名登記は受理されないが、改正法によれば、会社は中国語の社名も必要であるが、外国語の名称も登記することができる。
  8. 資金洗浄の防止について:現行法には関連規定がないが、改正法では、資金洗浄の手段となるのを避けるため、会社は原則として、関連政府当局に実質的な受益者(董事、監事、支配人および10%を超える持分を有する株主)の情報を申告しなければならず、また、無記名株式制度が廃止される。

なお、今回の改正条文の実施日については、行政院が別途公布する予定である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修