第318回 有償での観光ガイドについて

海外に在住する日本人が簡単にできる副業としてまず思い付くものに、日本人観光客への観光ガイドがあります。日本においては、通訳案内士試験という国家試験があり、以前はこの資格を取得しなければ、訪日外国人に対しガイド業務を行うことができませんでした。

2019年に改正通訳案内士法が施行され、日本では、特に資格を取得することなく、有償で外国人に対する案内業務を行うことが可能になりました(現在でも、「通訳案内士」と名乗るためには試験に合格する必要があります)。

しかし、台湾では、台湾を訪れる外国人に対して有償でガイドをする場合、ライセンスの取得が必要です。

台湾の観光発展条例第2条第12号によると、台湾を訪れる観光客を接待、または案内する業務を行い、報酬を受け取るサービス人員を「導遊人員」(日本の通訳案内士に相当)といいます。そして、導遊人員が合法的に上記業務を行うためには、以下のような要件を満たす必要があります。

  1. 導遊の国家試験に合格(観光発展条例第32条第1項)
  2. 職前訓練に合格(観光発展条例第32条第1項、導遊人員管理規則第7条第2項)
  3. 交通部からライセンスを取得(観光発展条例第32条第2項)
  4. 旅行会社に雇用され、または政府機関・団体から臨時の依頼を受ける(観光発展条例第32条第2項、導遊人員管理規則第3条)

違反すると5万元以下の過料

これらの規定に違反し、ライセンスを取得せずに導遊人員の業務を行った場合、1万台湾元(約3万6,000円)以上5万元以下の過料に処され、その業務を執り行うことが禁止されます(観光発展条例第59条)。

そして、観光発展条例裁罰基準第10条およびその附表6によりますと、過料の金額は、旅行会社での雇用の有無、国家試験合格の有無、訓練合格の有無等によって区別され、旅行会社で雇用されておらず、国家試験にも合格していない場合、5万元の過料に処されます。

海外在住の日本人を対象に現地ツアーガイドを募集するウェブサイトが存在しますが、台湾においては上記のような規制があるので、注意が必要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。