第321回 貿易法の改正

2019年12月25日、貿易法の一部改正が公布されました。今回の改正は、主にメード・イン台湾(MIT)製品の国際的な名声と台湾全体の経済的利益を維持するためのものです。

とりわけ、米中貿易戦争において、双方が互いに追加関税をかけた際、業者が中国大陸の製品を輸入して、原産地表示を台湾に付け替えること、不実の原産地証明書を申請・使用することを防止するため、罰則の強化や検挙制度の新設が行われました。

今回の改正のポイントは以下の通りです。

1、規定の明確化

これまで、不実の輸出入許可証または関連する貿易許可、証明文書の「使用」を禁止する規定がありましたが、その「申請」も処罰対象であることを明確にするため、「虚偽不実の方式による関連する貿易許可、証明文書の申請、または、当該許可、証明文書の使用」を禁止すると、文言が改められました(第17条第4号)。

2、検挙奨励規定の新設

輸出入者が産地表示の偽装を行っているのを一般人が発見した場合に、事実を詳述し、または、証拠資料を添付して主管機関に告発できるという検挙奨励規定が新設されました(第17条の1)。

3、刑事罰の強化

業者が許可を得ず違法に戦略ハイテク物資を管制地区外に輸出すること等を牽制(けんせい)するため、当該違法行為に対する罰金の上限が150万台湾元(約550万円)から300万元に引き上げられました(第27条)。

4、行政罰の強化

上記3に定められる刑事罰とは別に、業者が許可を得ず違法に戦略ハイテク物資を管制地区外に輸出した場合などに経済部国際貿易局(国貿局)が違反者に課すことのできる過料の金額が「3万元以上30万元以下」から「6万元以上300万元以下」へと大幅に引き上げられました(第27条の2)。

また、悪質な業者による不実の原産地証明書の申請・使用、不実の原産地の表示、または正当でない方法により貿易秩序を攪乱(かくらん)することなどを防止するため、これらの違法行為をした場合に課される過料の金額についても、「3万元以上30万元以下」から「6万元以上300万元以下」へと大幅に引き上げられました(第28条)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。