第333回 濫訴と弁護士費用の負担
訴訟費用については、敗訴者が負担することとされていますが(民事訴訟法第78条)、裁判を遂行するために弁護士に支払った報酬は、原則として、訴訟費用に含まれません。そのため、たとえ裁判で勝ったとしても、契約で約定(やくじょう)している場合や第三審の弁護士費用を除き、弁護士費用を敗訴者に請求することはできません。
ただし、例外として、訴訟の提起自体が不法行為となる(全く勝ち目がないのに、嫌がらせで相手を訴えるなど)ような場合、つまり濫訴(らんそ)の場合に、弁護士費用を敗訴者に負担させた裁判例は存在します。
濫訴には過料も
2020年4月17日、司法院の第183回院会で民事訴訟法および民事訴訟法施行法の改正草案が可決されました。今回の改正の主な狙いは、訴訟進行手続きをより簡単かつスピーディーにすることにあり、濫訴の防止のほか、送達代理受領人制度、科学技術設備の利用拡大、簡易訴訟手続きの適用範囲の拡充などについての改正案が出されました。
改正第249条第1項第8号では、原告による「訴訟提起が悪意、不当な目的、または重大な過失によるものであり、かつ、事実上または法律上の主張が合理的根拠を欠いている」(以下「濫訴」といいます。)場合、裁判所はこれを却下しなければならないと明文化されました。
そして、改正第249条の1第1項では、濫訴があった場合、裁判所は、原告、法定代理人、訴訟代理人をそれぞれ12万台湾元(約43万円)以下の過料に処すことが可能とされました。
さらに、改正第249条の1第2項により、濫訴があった場合、被告の日当、旅費および訴訟代理人として弁護士に委任した際の報酬は、訴訟費用の一部とされます。そのため、訴えられた側である被告が当該訴訟に際して要した弁護士費用は、濫訴者である原告が負担することになります。
なお、改正第449条の1第1項より、控訴の提起が濫訴にあたる場合にも、これらの規定が準用されます。
上記改正案は今後、立法院で審議される予定です。上述の通り、濫訴の場合について、改正案には、相手方が要した弁護士費用の負担だけでなく、12万元以下の過料という罰則まで規定されているので、濫訴を防止する効果が期待されます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。