第341回 有限会社の 決議定足数と決議要件の改正

 台湾の有限会社は日本の合同会社に類似する組織であり、株式会社と比べると、より属人的で非公開な組織です。株主全員一致の同意により会社の運営方針を決定しなければならないことが多いので、外部資本の影響を受けにくい一方、株主全員の同意を得るのに時間がかかり運営が進まないという欠点もあります。このような状況を改善するため、2018年の会社法改正において、有限会社の法定定足数と決議要件が緩和されました。

定款での加重不可

 法改正の趣旨に照らし、会社法の主務官庁である経済部の解釈によれば、「定款を修正した有限会社または新設した有限会社は、定足数や決議要件の加重を可能とする法令の明文規定がある場合を除いて、これらを定款によって加重することはできない。ただし、19年5月8日以前に既に旧解釈により加重した会社は、加重した内容を継続して使用することができる」とされています。

 この解釈は改正された会社法第106条、第108条、第110~113条に適用されます。つまり、増資の決議、董事の選出、財務諸表の作成・承認、株式の譲渡、定款の修正、合併、解散の決議などに適用されます。

増資は過半数の同意で

 具体的には以下の通り改正されました。

 第106条:増資は株主議決権の過半数の同意を得なければならない。株主議決権過半数の同意をもって、減資しまたはその組織を株式会社に変更することができる。

 第108条:3分の2以上の株主議決権の同意を得て、株主の中から取締役を選任しなければならず、代表取締役は取締役の互選で過半数の同意により選出されなければならない。

 第110条:取締役は毎会計年度の終了時に財務諸表などを作成し、各株主に個別に交付してその過半数の承認を求めなければならない。

 第111条:株主は他の株主議決権の過半数の同意がなければ、その出資の全部または一部を他者に譲渡することができない。取締役は他の株主議決権の3分の2の同意がなければ、その出資の全部または一部を他者に譲渡することができない。

 第112条:法定利益準備金のほか、会社は定款の定めまたは株主議決権の3分の2の同意をもって、特別利益準備金を別途積み立てることができる。

 第113条:定款変更、合併、解散は株主議決権の3分の2の同意を得なければならない。

したがって、19年5月8日以前に既に旧解釈により加重した会社でない限り、これらの法定定足数と決議要件を定款で加重することはできません。

なお、上述の法改正後も有限会社が比較的、属人的な組織であることは変わりません。第102条は「有限会社の各株主は出資の多寡を問わず、いずれも一票の議決権を有する。ただし、定款において出資比率に応じて議決権を分配する旨を定めることができる」と規定しています。よって、台湾の有限会社に投資する際には、株主が一人一票の議決権ではなく、出資比率に応じて議決権を有する旨の規定が定款にあるか否かを確認することが肝要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。