第360回 お酒の自家醸造
日本で酒類(アルコール分1度以上の飲料)を製造する場合、製造場の所在地の所轄税務署長から製造免許を受ける必要があります(酒税法第7条第1項)。
酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した場合、10年以下の懲役、または100万円以下の罰金のほか、製造した酒類、原料、器具等の没収という刑事罰に処せられます(酒税法第54条第1項、第4項)。また日本では、無免許の場合、自己消費目的であっても酒類を製造することができません。
実際に同罪で起訴された被告人が、裁判において、自己消費目的での酒類製造まで一律に免許の対象とすることは憲法第13条(幸福追求権)に違反すると主張した事件がありますが、最高裁判所はこれを認めませんでした(最判平成元年12月14日)。
このように、日本ではお酒の自家醸造について、厳しく制限されています。
台湾は100リットルまで可
台湾でも、酒類を製造をするためには、原則として、財政部の許可が必要です。許可を得ることなく、酒類を製造した場合、5万台湾元(約18万円)以上100万元以下(摘発時の摘発物の現在価値が100万元以上の場合は、最高で1,000万元)の過料に処せられます(たばこ酒管理法第45条第1項)。
しかし台湾では日本と異なり、一定数量を超えない場合には自己消費目的の酒類の製造が例外的に認められ、この場合、許可などを取得する必要がありません(同条第3項)。そして、財政部の公告によりますと、当該一定数量とは、各世帯で100リットルを指します(財政部99年3月5日台財庫字第09903504870号公告)。
日本でも酒類の自家醸造キットは簡単に手に入りますが、合法的な範囲(アルコール分1度未満)で楽しもうと思うと限界があります。そのため、もしご興味のある方は、比較的規制の緩い台湾滞在中に、お酒の自家醸造にチャレンジされることをお勧めいたします。
ただし、100リットルの範囲内で製造した酒類であっても、それを販売した場合には、3万元以上50万元以下(摘発時の摘発物の現在価値が50万元以上の場合は、最高で600万元)の過料に処せられますのでご注意下さい(たばこ酒管理法第46条第1項)。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。