第392回 会社の主要財産を譲渡する手続き
台湾の会社法上、「会社の全部または主要部分の営業または財産の譲渡」に該当する場合、株主総会の特別決議が必要であると、会社法第185条第1項第2号に規定されています。
主要財産は営業の性質で判断
上記規定の「主要部分」の定義について、法令上に明文規定はありません。主管機関である経済部も、「主要部分」の認定について、「各当該会社の営業およびその経営の性質によるべきであり、概括的に説明することは難しく、たとえ会社が定款において特定の財産が会社法第185条の主要部分の財産に該当すると定めたたとしても、当該特定財産を譲渡する際、同条の規定を適用するか否かについては、依然として各当該会社の営業およびその経営の性質をみて決定するべきである」と説明しています(2021年3月2日経商字第11002405310号書簡)。関連裁判例によりますと、以下の判断基準を参考にすることができます。
1.使用の目的で判断する方法
当該営業または財産を譲渡すると、会社の事業を成就できなくなる場合(最高裁1992年台上字第2696号判決を参照)。
2.形式的に判断する方法
会社法第20条に基づき作成した「主要財産の目録」に記載された主要財産に該当する場合(最高裁98年台上字第1998号判決を参照)。
3.実質的に判断する方法
譲渡部分の価値が譲渡者の総資産に占める割合と売上高に占める割合をもって総合的に判断します。00年以降、多くの判決はこの方法を採用しているものの、主要部分に該当する割合は各事案の内容により異なります。とはいえ、判決における事案を見る限り、会社の総資産または売上高に占める割合が50%以上の場合、主要部分に該当すると判断される可能性が高いと考えます。
分割譲渡も株主総会で要承認
上記の判断基準により「主要部分」に該当するものの、何回かに分けて譲渡する場合、依然として株主総会の特別決議が必要でしょうか?
高等法院(高等裁判所)台南分院14年度重上更(四)字第24号判決の事件において、被告は01年7月、11月および12月などに会社の全ての機器を6社に分割売却しました。当該機器の価値が非常に高く、また売却後、会社の事業が成り立たなくなったため、原告は、被告が会社法第185条に違反しており、株主総会の特別決議を経ずに会社の主要財産を譲渡したと主張しました。
しかし、裁判所は審理の結果、会社が機器売却後の02年3月12日に株主総会を召集し、発行済株式数の81%を占める株主が出席した上で、機器の売却を承認したため、既に補正、追認の効果が生じていると判断しました。裁判所から、株主総会が事後的に補正、追認を行ったという判断から、「主要部分」の譲渡が分割譲渡であったとしても、依然として株主総会の承認が必要であることが間接的に示されていると考えます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。