第399回 交通違反と報奨金
道路交通管理処罰条例(中国語:道路交通管理処罰條例)第7条の1によれば、同条例の違反者がいる場合、それを見つけた市民は、違反事実を明確に記載し、または違反の証拠資料を添付して、警察に告発(中国語:検挙)することができますが、2021年10月7日、当該条項の改正草案が立法院の初審を通過しました。
16年に市民に告発された交通違反の案件数は約153万件でしたが、20年には約598万件に急増し、警察による検挙総数の3分の1を占めるまでになりました。しかし、市民による告発は、つきまとい撮影や悪意による報復等、恨みを買うことがあり、また、告発の急増により警察の負担が大きいため、今回の改正草案が提出されました。
原規定では、市民が告発できる項目について特に限定がありませんが、改正草案では、大分類二つ、合計46項目が列挙されています。大分類のうち一つは、危険運転等、交通の安全の危険性が比較的高いもので、もう一つは、駐車違反等の静的違反(交通安全と秩序に重大な影響を与える場所に限る)です。
また、今回の改正草案では、時間的場所的間隔の制限が設けられ、同一車両が同一規定に違反する場合、一つの違反行為が一つの交差点を通過するまでに行われ、または時間的間隔が6分以内である場合、一つの違反行為についてのみ告発することができるとされています。
告発者に対する報奨金制度
台湾では、民間の告発者に対し、違反者が支払った過料の一定の割合の金額を支払う報奨金の制度があり、多額の報奨金を稼ぐ「検挙達人」と呼ばれる人たちがいます。しかし、交通違反については、違反行為の告発全てに報奨金が与えられるわけではなく、以下の違反行為の告発に限定されています(道路交通管理処罰条例第91条第4号)。
・蛇行またはその他の危険な方法による運転
・スピード違反
・あおり運転、急な車線変更またはその他の不当な方法により、道を譲らせた
・突発的な状況がないのに、急に減速し、ブレーキを踏み、または一時停車した
今回の改正草案が最終可決された場合、連続した違反行為をまとめて告発することができなくなるため、「検挙達人」の収入にも少し影響が出るのではないかと思われます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。