第408回 飼い主の責任

 2021年12月2日、屏東県内で、3歳の男児が近所で飼われていた犬、ピットブルに噛まれて死亡するという事件が発生しました。飼い主の男は、刑法第276条の過失致死罪の容疑で書類送検され、また、動物保護法に違反したとして過料を科されました。

飼い主の義務

 動物保護法第19条第1項および第2項では、行政院農業委員会(農委会)が公告したペット(犬のみが該当します)の出生、取得、譲渡、遺失および死亡について、飼い主は、地方政府または地方政府が委託した民間機構・団体において登記しなければならない旨が規定されています。そして、ペット登記管理弁法によると、出生については4カ月以内、取得・譲渡については1カ月以内、遺失については5日以内、死亡については1カ月以内に登記手続きを行う必要があります。この期限を過ぎた場合、動物保護法第31条第1項第8号により、3,000台湾元(約1万2,000円)以上1万5,000元以下の過料が科されます。台北市など地域によっては、自治条例により猫を登記対象に含めている場合もありますので、ペットを飼う地域の条例も確認する必要があります。

 また、動物保護法第22条第3項によると、営業ライセンスを取得した業者以外の飼い主は、原則として、特定ペット(特定ペット業管理弁法第2条によると、犬および猫が該当します)を去勢しなければならず、これを免れるためには、地方政府に繁殖管理説明書を提出する必要があります。この規定に違反した場合、動物保護法第27条第8号により、5万元以上25万元以下の過料が科され、また、違反者の氏名、写真、および違法事実を公開できるとされています。

 前記事件の飼い主は、動物保護法の上記2つの規定に違反していたため、過料が科されました。

 飼い主は、前記のような刑事責任、行政責任のほか、民事責任も負います。民法第190条では、動物が損害をもたらした場合、その占有者(飼い主であることが多い)は、これにより生じた損害について、被害者に賠償する責任を負う旨が規定されています。しかし例外として、動物の種類および性質に従い、相当の注意を払って管理していた場合、または相当の注意を払っていても、損害が発生していたであろう場合には、賠償責任を負わないとされています。

 前記事件の買い主の管理状況にもよりますが、遺族が飼い主に損害賠償を請求した場合、当該請求が認められる可能性が高いと考えます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。