第410回 通信ソフト事業は登記が必要か
台湾で会社または支店を経営する場合、経済部または地方自治体での登記が必須となります。
取り扱う業務が、通信ソフト、または通信機能を備えた情報サービスである場合も、台湾の国家通訊伝播委員会(NCC)で登記しなければならないのでしょうか。
電気通信管理法の法改正
以前は、旧電気通信管理法において、「通信サービス」を取り扱う会社に対して免許制を取っており、「通信サービスとは何か」について明確な定義がありませんでした。
しかし2020年7月1日に新電気通信法が施行された後は、登記制に変更となりました。また「電気通信サービスとは、公衆電気通信網を利用して公衆通信を提供するサービスをいう」と明文化されました。
従前は、通信ソフトがどのような場合において電気通信サービスに該当すると認定されるかについての争いがありましたが、新法では、公衆電気通信網を利用していない限り電気通信サービスに該当しないと、かなり明確な定義がなされました。
登記必要な電気通信サービス
新法では、サービスが無線周波数に関わる、または電気通信番号を使用することから電気通信事業者としての登記が必須となる場合を除き、電気通信サービスを提供するその他の業者は、電気通信事業者として登記するか否かを自ら決定することができます。
つまり、ユーザーに提供するサービスが、電話番号の付与、周波数または周波数帯の使用に関わる場合は、他の電気通信会社、または周波数帯の使用者と協議しなければならないため、NCCでの登記が必須となります。
ユーザー間の通信を取り扱うだけの場合、例えば、当該APPのユーザー間でのみ相互通信が可能であり、APPによる公衆電気通信網への通信に関わらない(電話番号の付与を取り扱わない)場合は、NCCは登記を強制しません。
しかし、取り扱うAPPのユーザーが、携帯電話または国際電話をかけることができる、つまり、公衆電気通信網への接続、および、その他の電気通信事業者との相互接続に関わる場合は、登記が必須となります。
科学技術が進歩するにつれ、通信機能を備えたAPP、またはソフトウェアが多くなってきました。
前述の通り、通信機能を備えていても、NCCで電気通信業者の登記が必要であるわけではありません。
もっとも、登記にもメリットがあります。NCCの協力により、他の電気通信事業者と相互接続する、または仲裁を行う必要がある場合には、登記が必須です。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。