第421回 新型コロナに関する刑事責任
新型コロナウイルス感染症に感染した女性が陰圧隔離室から逃げ出した行為に関し、2022年4月4日、彰化地方法院(地方裁判所)はこの女性に拘留50日の判決を言い渡しました。
病院から2回逃げ出す
本件の概要は以下の通りです。
彰化県の周という女性は21年6月に新型コロナ感染で肺炎を起こし、治療と隔離を行うため、彰化県の秀伝紀念医院5階の陰圧隔離室に収容されました。女性は入院後、病室から2回逃げ出しました。2回目は非常階段から1階に逃げたため、病院側は看護スタッフ5人を出動させて、ようやくこの女性を陰圧隔離室に戻すことができました。
周という女性の行為は、「重度の特殊感染性肺炎の予防治療および救済振興特別条例(以下「本条例」といいます)第13条(重度の特殊感染性肺炎に罹患し、または罹患した疑いがあり、各クラスの衛生主管機関の指示に従わずに他者に感染させる恐れがある場合、2年以下の有期懲役、拘留または20万台湾元(約86万円)以上200万元以下の罰金に処する。)に基づき彰化地方検察署(彰化地検)により起訴されました。彰化地方法院の審理を経て、この女性の行為は他者に感染リスクをもたらし、犯罪行為が明確であると判断されたため、拘留50日の判決が言い渡され、「2万元を国庫に寄付する」ことを条件とし、2年の執行猶予が与えられました。
デマ拡散も処罰対象
本条例には第13条以外にも新型コロナに関する他の刑事責任についての規定があります。比較的重要なものとしては、次があります。
第12条第1項:「中央衛生主管機関により公告された防疫用の器具、設備、薬品、医療器材またはその他の防疫物資につき、価格をつり上げた場合、または正当な理由もなく買い占めて市場の需要に応えて販売しない場合、5年以下の有期懲役に処し、500万元以下の罰金を併科することができる。」
第14条:「重度の特殊感染性肺炎の流行拡大の状況に関するデマまたは事実ではない情報をまき散らし、公衆または他者に損害を生じさせるに足る場合、3年以下の有期懲役、拘留に処し、または300万元以下の罰金を科し、もしくは併科する。」
上記の第14条は感染していない一般人も違反する可能性のある条文ですので、特にご留意ください。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。