第429回 M&A関連法規の改正
2022年5月24日、立法院において、企業併購法(企業合併・買収法)の一部条文の改正案が最終可決されました。今回の改正は、M&A(合併・買収)の弾力性および株主の権益の向上を目的としたものです。今回の改正の主な点は以下の通りです。
1、株主の権益の保障
現行法第5条第3項では、株主が株主総会前の一定の合理的な期間において関連情報を取得する機会がないことから、株主の権益保障を強化するため、同条第4項が新設されました。改正法第5条第4項によれば、会社は、株主総会の招集事由中で、董事が合併・買収について有する利害関係の重要な内容、および合併・買収決議に賛成または反対する理由を説明する必要があります。
また、現行法第12条第1項では、会社が合併・買収を進める場合に、株主総会の開催前または開催中に書面または口頭で異議を表明し、議決権を放棄した株主は、会社に対し、その有する株式を買い取るよう請求することができるとされていますが、当該規定では、反対投票をした株主が含まれておりません。今回の改正では、株式買取請求権の適用範囲が拡大され、議決権を放棄せず、反対投票をした株主にも株式買取請求権が認められました。
2、非対称性合併の適用範囲拡大
台湾では、日本の簡易合併手続きを参考に制定された非対称性合併という合併方法があります。これは、合併の際に消滅会社の規模が存続会社と比較して一定の基準より小さい場合に簡易な手続きで合併を可能とするものです。
現行法第18条第7項では、非対称性合併の2つの適用要件について「かつ」という用語が使われ、両方の要件を満たして初めて同条項が適用されるとされていましたが、改正法では「または」という用語が使われ、その適用範囲が拡大されました。また、合併の対価総額が存続会社の純資産の「2%」を超えない、という適用要件について、その価額が「20%」に引き上げられました。
このため、改正法では、以下のいずれかの要件を満たせば、非対称性合併に該当し、当該合併について、董事会決議のみで足りる(株主総会決議は必要ない)ことになります。①合併のために発行される新株式が、存続会社の発行済みの議決権付株式総数の20%を超えない。
②合併のために消滅会社の株主に交付される株式、現金またはその他の財産価値の総額が、存続会社の純資産の20%を超えない。
上記のほか、今回の改正により、M&A実施の際の租税措置についても弾力性が増加しています。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。