第461回 配偶者が家を出た場合、離婚を主張できるか?
ある台湾人が2018年に外国籍の妻と結婚し、結婚後1年が過ぎたある日、妻がごみ袋を持って家を出た後、二度と戻りませんでした。家族は当初、妻がごみ出しに行ったものと思っていましたが、当人は見つからず、通報しました。ところが妻は「もう台湾にいない」と述べ、こうして、家を出てから3年が経過しました。このような状況で、離婚を主張できるのでしょうか。
台湾民法第1052条第1項は、裁判所に対して離婚を請求することができる理由を定めています。例えば、▽配偶者が重婚したとき、▽同居に堪えないほどの虐待を与えたとき、▽治療不可能な疾病または重大な精神病があるとき、▽3年以上にわたり生死が不明なとき──などがあります。また、同条第2項は「第1項以外の重大な事由があり、婚姻を維持し難い場合、夫または妻は離婚を請求することができる。ただし、夫または妻が当該事由について責任を負うべき場合、他方のみが離婚を請求することができる」と規定しています。
第1項には「家を出る」という項目がないため、夫は同条第2項に基づき裁判所に裁判離婚を申し立てました。
裁判所は、第2項の立法趣旨は、第1項各号に列挙されている離婚理由が厳格すぎるために第2項を追加するものであり、つまり夫婦のいずれかの事由について、第1項に掲げる各号の要件を備えていなくても、客観的に婚姻生活の維持が困難であれば、裁判離婚を請求できると判断しました。
共同生活があるか
また婚姻関係においては両者の共同生活が必須であり、双方は互いに同居義務を負うということは民法第1001条で明文規定されています。より婚姻の本質となる効果を持つのは同居義務であり、婚姻関係の本質たる義務である以上、婚姻関係の存続中は、継続して存在するはずだと判断しました。
最後に裁判所は、両者の共同生活がなくなってから少なくとも3年が経過しており、これは社会的観点から見ても短期間とは言えず、その上、妻は家を出た後夫に連絡もしておらず、この状況は裁判所での弁論終結時点でも変化がなく、関係を修復するのは非常に困難であると判断し、これにより、両者の離婚を認める判決を下しました。
国際結婚は末永く結婚が継続する例も多々ありますが、残念ながら価値観、文化などの違いから、最終的に離婚する例も少なくありません。婚姻が台湾に関連する場合、離婚の際には、現地の法律専門家に相談することをお勧めいたします。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。