第499回 DV防止法の改正

立法院は11月21日、最終審議でドメスティック・バイオレンス(DV)防止法(以下「本法」)の21条改正条文を可決しました。今回の法改正の要点は次のとおりです。

同性婚を対象に

1.同性婚の家族構成員に対する保護を拡大し、同性婚の姻戚関係を本法の適用対象に組み入れました。

これまでは、被害者が同性婚の配偶者の身内からドメスティック・バイオレンス(家族構成員間で行われる身体的、精神的または経済面における嫌がらせ、支配、脅迫またはその他の不法な侵害行為を指します)を受けた場合、本法を適用することができませんでしたが、法改正後においては、同性婚の片方とその配偶者の四親等以内の親族との間にドメスティック・バイオレンス行為があった場合はすべて本法により保護されます。

2.性的画像(性行為、性器などの内容が含まれた画像を指します)を本法の適用範囲に組み入れました。

法改正後、被害者は、民事保護命令を申し立てることにより、性的画像の引き渡しや削除、またはアップロードされた性的画像をウェブサイトから削除することを加害者に要求することが可能になりました。

また、インターネットのプラットホーム事業者も、そのプラットホーム上に被害者の性的画像があることを警察機関から知らされた場合、当該性的画像についてユーザーの閲覧を制限するか、または自発的に削除しなければならないこととなりました。

3.被害者の人身の安全を有効に守るため、通常は、保護命令の期間が満了した後、当該保護命令の有効期間を延長するかどうか裁判所が決定するまでの間において、当初の保護命令はその効力が維持されます。

4.相手方(加害者)と未成年子女が面会交流を行う時間、場所および方法を含め、裁判所が一時保護命令または緊急保護命令を発する対象範囲が拡大されました。

5.同居していない恋人間の安全保護が強化されました。

法改正前は、配偶者、前配偶者または同居している恋人間のドメスティック・バイオレンス行為に限り本法が適用されましたが、法改正後は、同居していない恋人が他方から暴力や嫌がらせなどの行為を受けた場合でも同様に本法に基づいて裁判所に保護命令を申し立てることができるようになり、暴力を加えた者も本法における刑事犯罪に該当することとなりました。

6.法改正後、ドメスティック・バイオレンスの被害者は、その直系血族の加害者による被害者の戸籍資料の閲覧禁止を申し立てることができるようになりました。

これによって、生家をすでに離れた子女が加害者(両親)にその戸籍資料を取得されることがないようになりました。

日台間の恋人にも適用

弊所では日本人と台湾人の恋人間の感情のもつれによる事案を多数処理しています。

これまでは、日本人と台湾人の恋人が同居していない場合には本法の適用が困難でしたが、法改正後、被害者は同居していなくても台湾の裁判所に保護命令の申し立てまたは刑事告訴ができるようになりました。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。