第500回 企業結合申告基準の緩和

台湾の公平取引委員会(以下「公平会」)は企業結合における公平取引法(以下「本法」といいます)違反の有無の審査を担当する主管機関であり、公平会は級別の審査制度を採用し、結合による競争制限の懸念の大きさによってそれぞれ通常作業または簡略化作業による審査フローを適用します。

今年6月末には、企業の結合申告の負担を軽減するために、審査に関する規定が次のとおり、さらに改正されました。

結合申告が不要な類型を追加

「外国企業が海外で共同で合弁企業を設立または運営するために結合を実施し、かつ、当該合弁企業が台湾で経済活動に従事しない」という類型の結合は、申告が不要になりました。

簡易手続き可能な類型を拡大

「結合の取引金額が25億台湾元(約120億円)に達していない」、「水平型または垂直型の結合に関連する商品または役務の台湾における前年度の販売金額がいずれも2億元に達していない」および「被結合企業の台湾における前年度の販売金額がいずれもゼロである」などの3つの類型が、簡易手続きを適用できるものに追加されました。

この3つの類型について、公平会は具体的に次のように説明しています。

1.日系企業AおよびBは日系企業Cの株式をそれぞれ49%、51%取得する予定であり、結合参加企業は、台湾において6種の製品の市場シェアが4分の1を超え、結合の申告基準を満たしますが、本件の企業結合の取引金額が25億元に満たないため、簡易手続きの適用対象となります。

2.米系企業A社は米系企業B社の全株式を取得する予定であり、B社の非結合の関連商品の台湾における市場シェアが4分の1を超えており、結合の申告基準を満たしますが、本件は水平型の結合であり、前年度におけるA社およびB社の水平型結合に関連する商品の台湾市場における販売金額の合計が2億元に達していないため、簡易手続きの適用対象となります。

3.E社はその子会社を通じて中国大陸のF社と共同で合弁企業を設立・経営し、当該合弁企業が中国大陸のG社の資産を譲り受け、中国大陸でセメント原料の生産業務に従事する予定である。E社は台湾のセメント市場におけるシェアが4分の1を超えており、結合の申告基準を満たしますが、F社、G社の台湾における販売金額がすべてゼロであるため、簡易手続きの適用対象となります。

以上をまとめると、企業結合が本法に違反する場合、公平会は当該企業に対し、その結合を禁止するか、期限を定めて企業の分離、全部もしくは一部の株式の処分、一部の事業の譲渡、担当職務の解任を命じる、またはほかの必要な処分を与えることができ、さらに、20万元以上5000万元以下の過料に処することができます。

企業結合申告の要否や、どのような手続を適用して申告するかについては、現地の法律の専門家に相談することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。