第512回 取締役会の書面決議

台湾では、2018年の会社法改正により、株式を公開発行している会社以外では、一定の条件のもと、取締役会の書面決議を行うことができるようになりました。

具体的には、会社法第205条第5項において、「取締役全員が同意することによって、取締役が、その回の取締役会の議案について、実際に集まることなく書面によりその議決権を行使することを、会社定款において定めることができる」という規定が設けられました。

書面決議の実行

前述した会社法における書面決議の規定は、施行されてから現在まで既に5年余りが経過しており、主務官庁である経済部も、その執行について、次のような解釈を続々と行っています。

1. 取締役の同意の意思表示は、口頭または書面でなされる。法律には制限規定がなく、会社法にも、同意の方法を定款で定めなければならないとする規定はない。

2. 一部の取締役が「書面」により議決権を行使することに同意し、一部の取締役が「書面」により行使することに同意せず、取締役全員の同意を得ることができない場合には、実際に集まらなければならず、書面による議決権の行使はできない。

3. 取締役会の議事録の記載については、依然として、「議事録には会議の年月日、場所、議長の氏名、決議方法、議事の経緯の要旨およびその結果を記載しなければならず、会社の存続期間中、永久に保存しなければならない」との定めを遵守しなければならない。ただし、書面決議の議事録の記載方法については、書面により議決権を行使している旨を表章するほかは、実際に集まっていないため会議場所の記載は不要とする。

4. 書面決議については本法第204条の規定の適用を除外しないため、会社は依然として、書面決議の事由および行使方法を法定の期限または定款に定める期限までに各取締役および監査役に通知しなければならない。

以上をまとめますと、台湾で会社を経営する外国人に関しては、長期間台湾にいないのであれば、会社の定款において、取締役会の書面決議について規定すれば比較的都合がよいと考えます。

なお、テレビ会議(視覚的通信手段に限定。音声のみは除外)によって取締役会を開催することができ、取締役も、基本的には必ずしも台湾に居住する必要はありませんので、外国人が台湾の会社の取締役に就任することについては、制限は多くありません。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。