第516回 空港での冗談
今年1月4日、桃園国際空港において、マカオ行きの飛行機に乗る予定だったAが、預入手荷物の手続きの際に、航空会社のスタッフに対し「荷物に爆弾が入っている」旨の冗談を言ったところ、スタッフが警察に通報し、Aは逮捕されました。そして、Aは、今年4月に民用航空法違反で起訴されました(以下、「本件」)。
日本でも事例
日本でも2022年5月に飛行機の手荷物に「爆弾が入っている」旨を冗談で告げ、飛行機の出発を遅らせた男が軽犯罪法違反で書類送検された事例がありました。当該事例では軽犯罪法が適用されましたが、同法違反の罰則は「拘留」(1日以上30日未満)または「科料」(1000円以上1万円未満)とそれほど重くありません。また、当該事例では、容疑者が逮捕されることもありませんでした。
もっとも、過去には同様の事例で威力業務妨害罪が適用され、容疑者が逮捕されたこともあります。
3年以下の懲役か罰金
本件において、Aは、日本の軽犯罪法のような軽い罪ではなく、民用航空法違反で逮捕・起訴されました。
民用航空法第105条では、「公務員、民間航空事業者または活動団体の人員に対し、犯人を指定せず、航空機または施設の安全を害する旨を偽って告げ、または航空機の安全を害する不実の情報を広めた場合、3年以下の有期懲役、拘留または100万台湾元(約475万円)以下の罰金に処する」旨が規定されています。
過去の同様の事案では、犯行の動機が「海外旅行で調子に乗ってしまった」もので、厳重な危険が生じていないため、10万元の罰金が科されました。本件では、飛行機の出発時刻に影響は出なかったので、同程度の刑事罰が科されるものと予想します。
交通部民用航空局(民航局)の資料によると、1年で4、5件、同様の事件が発生しているようです。また、中には逮捕後、刑事裁判が終了するまで出国を禁止された事例もあります。
海外旅行や日本への帰国等で気持ちが高揚することもありますが、空港では「爆弾が入っている」等の冗談を言わないよう注意が必要です。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。