第518回 グループ会社間での支配人・取締役の兼任は競業行為か

台湾の会社法(以下「本法」といいます)第29条、第32条、第209条第1項は、支配人および取締役が会社と競業する行為に従事する場合、法律に基づいて、取締役会または株主の同意を得なければならない旨をそれぞれ規定していますが、本法の主管機関である経済部は以下の要旨の見解(2012年10月11日付経商字第10102435880号、2013年1月7日付第10102446320号書簡をご参照ください)を示しました。

利益相反があるか

「前記規定の立法理由は、取締役または支配人の利益と会社の利益に衝突が生じることにより、取締役または支配人が自己の職責を忠実に履行せず、同種の事業を別途営み、ひいては会社の利益を損なうようになることを回避するためである。

ただし、取締役が同種の事業を営む他社の取締役または支配人を兼任しており、当該二つの会社が完全な親子関係にある場合、法的には独立した法人格を有する二つの法人であるものの、経済的意義においては実質的に一体であり、両者の間に利益相反はないと言える。

したがって、この場合における取締役または支配人の兼任は、前記規定の競業行為を構成しないと判断すべきである。」

「A社はB社およびC社の100%の株式を同時に保有し、さらにC社はD社に出資して100%の株式を保有している。

ここにおいて、B社、C社、D社はA社が100%の株式を直接的、間接的に保有する会社であり、各社は法的には独立した法人格を有する会社であるものの、経済的意義においては一体であり、互いの間に利益相反はないと言える。

このため、B社とC社間(水平的関係)とA社とD社間、B社とD社間(垂直的関係)での取締役または支配人の兼任は、前記規定の競業行為を構成しない。

実質的に一体

このため、経済的意義において実質的に一体であり、互いの間に利益相反がない会社間での支配人・取締役の兼任は、競業行為に該当しないと考えられます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。