第521回 法人株主が取締役の議席を取得した場合の制限

台湾の会社法(以下「本法」といいます)第209条では、取締役が会社と競業する行為に従事する場合、株主総会の同意を得なければならない旨を規定しています。

また、本法第27条2項では、法人が株主である場合、その代表者が取締役に選任される(以下「法人代表取締役」といいます)こともできる旨を規定しています。

では、競業避止の制限を受けるのは「法人代表取締役」だけなのでしょうか。それとも、代表される法人株主も同様の制限を受けるのでしょうか。

「競業避止」の制限対象

経済部が公表した2000年4月24日付の第89206938号書簡には、次のように記載されています。

「会社法第209条における『取締役の競業避止』の規制目的は、会社の営業秘密を保護することにある。

法人株主が本法第27条第2項に基づき、代表者を指名して取締役に選出する場合には、当該代表者は会社の営業秘密を知る機会があり、また、法人株主とは委任関係にある。

委任関係については、民法第540条の規定により、受任者(当該代表者)は、委任事務の進行状況を委任者(当該法人株主)に報告する義務がある。

従って、当然に当該法人株主にも会社の営業秘密を知る機会があるため、当該代表者および当該法人株主の両方とも競業避止の制限を受ける対象となる」

株主総会からの同意の取得

以上によりますと、台湾の会社の法人株主になって「法人代表取締役」の議席を取得した場合、競業避止の制限を受けるのはその取締役だけではなく、株主自身も同様の制限を受けることになります。

そのため、取締役だけではなく、株主自身も、自己または他者のために会社の営業範囲に属する行為(つまり、競業避止により禁止された行為)を行う場合、会社の株主総会に対しその行為の重要な内容を説明し、同意を得なければならないとされています。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。