第530回 食品表示の不実・誇張があった場合の罰則

台湾における食品表示に関する規制は、日本よりも厳しく制限されております。台湾の食品安全衛生管理法第28条では、食品などについてはその表示、宣伝または広告に不実、誇張、または誤解を生じやすい状況があってはならないと規定しています。

数多くの健康食品の類の広告において、「事実と異なる」記述、「証拠がない、または裏付けとしての証拠が足りない」記述、または、記憶力を高める、体質を改善する、痩せる、背を伸ばす、髪の毛を黒くする、老化を防ぐ、美白といった「人体の器官、組織、生理または外観の機能の維持または改変にかかわる」記述を用いた場合、同法第45条第1項に基づき4万台湾元(約19万円)以上400万元以下の過料が科される可能性があります。

過料の算出方法

「食品安全衛生管理法第45条に定める広告の取扱いの原則」第2条によると、過料の金額は主に規則違反の回数を基準とし、さらに「資力(売上高および運営資金)」、「故意または過失」、「消費者の健康がそれにより害されたことが証明されているか」などの状況を加重パラメータとして、その金額が算出されます。

詳しくは以下に述べます。

A. 規則違反の回数:1回目から4回目まではそれぞれ4万元、6万元、10万元、15万元で、5回目以上は20万元以上となります。

B. 資力:規則違反の事実があった日から遡って12カ月以内の期間において、すべての規則違反製品の売上高が240万元に達しておらず、かつ資本金の額が1億元に達していない場合には加重されませんが、売上高が240万元から480万元までの間であり、かつ資本金の額が1億元以上~10億元までの場合には1倍が加重され(つまり、2を乗じる)、資力に伴って高くなり、最大で5までを乗じます。

C. 過失行為については加重されませんが、故意の行為については1倍が加重されます(つまり、2を乗じる)。

D. 消費者の健康がそれにより害されたことが証明されていない場合、加重されませんが、証明された場合には、1倍が加重されます(つまり、2を乗じる)。

故意なら2倍

例えば、ある規則違反の事件では、行為者が処罰されるのは2回目で、その売上高が200万元、資本金が1000万元でしたが、1回目の処罰は食品についての「記憶力を高める」との表示が事実と異なると判断されたためであり、今回処罰されたのもそれと同じ理由であったことから、故意の行為と判断されました。なお、消費者の健康がそれにより害されたことは証明されていません。

そこで、上記の算出方法により、この事件の過料の金額は、6万元×1×2×1=12万元となるはずです。

ほかに特別の事由がある場合には、主管機関は、理由を明らかにした上で過料を重くすることができます。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。