第533回 食品広告の不実・誇張の判断基準

食品安全衛生管理法(食安法)第28条第1項では「食品、食品添加物、食品用洗剤および中央主管機関により公告された食器、食品容器または包装は、その表示、宣伝または広告に事実と異なる、誇張した、または誤解を招きやすい内容があってはならない」と規定しています。

実務上、日本よりも厳しく制限されている印象を受けますが、具体的にどのような判断がなされているかについて、以下の裁判例が参考になると考えます。

全体表現で総合判断

当局はかつて「目を保護する」の文言が「誇張した、または誤解を招きやすい内容」に該当するとしました。裁判所は、「目を保護する」と明記されていない「CLEAR+LUTEIN TONIC立睛亮」の広告に対し下記の判断を下しました。

食安法第28条は、一般市民が誇張した、事実と異なる、誤解を招きやすいまたは医療的効能を標榜した表示、宣伝または広告を誤信することがないように、消費者の健康と権益を守り、飲食に対する正しい、バランスのとれた意識を確立する目的で定められた。

そのため、認定基準は行為者が主観的に存在すると認知する事実の情状を基礎とするものではなく、客観的に一般消費者の角度からその行為に法規範が防止しようとする危害を生じさせる可能性があるかを判断すべきで、客観的に危害を生じさせる可能性がある場合には、その行為は食安法の規定に違反していると認定することができる。

食品の品名およびその表示、宣伝または広告の内容に事実と異なる、誇張した、誤解を招きやすいまたは医療的効能を標ぼうするところがあってはならない。規則に違反するかは、実際に消費者に伝えられる情報の全体としての表現(製品名、文章の叙述、図案、符号など)を見て総合的な検討判断を行う。

行為者が販売する「CLEAR+LUTEIN TONIC立睛亮」という製品は、品名に「睛(瞳)」、外包装に「CLEAR+」の文言が表示され、また、子どもが「CLEAR+」の文言を目視している写真を使用し、視力を改善する効能効果をほのめかしている。客観的にこの製品を食用すれば「目を保護する」および「視力を改善する」効果があると誤解させる可能性があり、全体としての表現が誇張した、誤解を招きやすい内容に関わっている。

以上より、食品の広告において当局が禁止する用語を記載していなくとも、総合判断の上、禁止されている用語の表現に該当すると判断された場合、禁止対象となります。外国の食品を台湾に輸入して販売する際は、原製品名または広告が台湾で直接使用できるものか必ず確認しなければなりません。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。