第542回 推奨広告の法的リスク

「サクラ」に依頼してインターネットフォーラム上で自社製品を推薦する投稿をしてもらうことは、法令に抵触するでしょうか?

公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)は「推奨広告」を、「広告でまたはその他公衆に知らしめる方法によりその商品またはサービスに対する意見、信頼、発見または自身の体験の結果を伝えるものとして、制作放送する広告または対外的に行う表明」と定義しています。

推奨広告に関する規制

推奨広告に関して、公正取引法(以下「本法」)第21条第5項の後段および第25条において、「広告の推奨者が、その推奨行為が誤解を招く恐れがあることを知りながら、または知り得る状況にありながら、なおその推奨を行った場合、広告主と連帯して損害賠償責任を負うものとする。ただし、広告の推奨者が有名人、専門家または専門機関でない場合は、広告主から受けた報酬の10倍を上限として、広告主と連帯して損害賠償責任を負うものとする」、「事業者は、その他取引の秩序に影響を及ぼすに足りる欺罔(ぎもう)または明らかに公正さに欠ける行為をしてはならない」という規制があります。

また、同会は「推奨者と広告主との間に、一般市民が合理的に予想できない利益関係がある場合には、広告において十分に開示しなければならない」、「推奨広告がSNS(交流サイト)プラットホームでのポスト(ネット上のブロガーによるポストおよびフォーラムでの投稿などの方法を含む)という方法で行われる場合において、推奨者と広告主との間に一般市民が合理的に予想できない利益関係があるが、広告においてそれが十分に開示されておらず、かつ、取引の秩序に影響を及ぼすに足りるときは、本法第25条の規定違反にかかわる」という見解を示しています。

つまり、「サクラ」に依頼してインターネットフォーラム上で自社製品を推薦する投稿をしてもらう場合、サクラと広告主との間に一般市民が合理的に予想できない利益関係があるが広告においてそれが十分に開示されておらず、かつ、取引の秩序に影響を及ぼすに足りるときには、処罰を受ける可能性があります。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。