第543回 会社責任者への損害賠償請求と短期消滅時効
会社法第23条第2項では、「会社責任者が会社の業務執行において法令に違反して他者に損害を与えた場合、他者に対し会社と連帯して賠償責任を負わなければならない」旨が規定されています。
2024年7月16日、最高法院(最高裁判所)民事大法廷は、当該賠償責任の法的性質に関して裁定を下しました(最高法院2023年度台上大字第1305号民事裁定)。
損害賠償の時効
当該事例は、2015年に発生したイベントでの爆発事故で負傷した消費者が、当該イベント会場を貸していた会社の責任者に対し、19年に損害賠償を請求したものです。本件請求は事故から4年が経ってはじめてされたため、被告である会社責任者は消滅時効が成立していると主張しました。
この点に関し、民法第125条では、法律により短い期間が定められている場合を除き、債権は、「15年」以内に行使しなければ消滅する旨が規定されています。また、民法第197条第1項では、不法行為に基づく損害賠償請求は、被害者が損害および賠償責任を負う者を知った日から「2年」以内に行使しなければ消滅する旨が規定されています。
上記被告の主張は、後者の「2年」の短期消滅時効を主張するものです。これについて裁判所は、会社法第23条第2項で定められた会社責任者の賠償責任は不法行為責任の性質を有するとして、民法第197条第1項の適用し、短期消滅時効の成立を認めました。
損害賠償以外の短期消滅時効
不法行為に基づく損害賠償請求権以外にも2年の短期時効にかかる請求権が存在します。例えば、技術者および請負人の報酬、並びにその立替金(民法第127条7号)や商人、製造者および手工業者が提供した商品および製品の代金(同条第8号)があります。日本では、20年4月1日に施行された改正民法において、短期消滅時効が廃止されましたが、台湾では現在もなおこのような短期消滅時効が存在しています。
上述のようにビジネス上の取引では短期消滅時効が設定されていることもあるので、権利が消滅しないよう注意が必要です。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。