第545回 チケット転売の法的リスク
台湾におけるコンサートチケットの販売方法は通常、日本とは異なっており、日本でよく見られる登録抽選制は台湾ではめったにありません。台湾では、ウェブサイトに直接アクセスして購入するため、観客が販売開始の瞬間にチケットを狙って一斉にアクセスし、ネットワークが混み合い繋がらないという状況がよく見られます。
またこれは、チケットの不正転売業者にデバイスやプログラムを利用してチケットを買いあさる機会を与えることにもなっています。こうした現象から、文化創意産業発展法第10条の1(以下「本条」といいます)が追加されました。
■ダフ屋行為の処罰
本条第2項および第3項ではそれぞれ、下記のとおり二種類の「ダフ屋行為」について定めています。
1.過料で処罰するダフ屋行為
興行入場券を券面額または定価を上回る額で販売した場合、チケットの枚数に基づき、券面額または定価の10~50倍の過料に処されます。
主管機関は、物品との抱き合わせ販売、物品とチケットの交換を含め、利益を獲得していればすべてダフ屋行為と言え、取引が成立しなくても処罰するという立場です。
2.刑罰で処罰するダフ屋行為
虚偽の情報またはその他の不正な方法により、コンピューターまたはその他の関連設備を利用して興行入場券を購入し、チケットの予約証票または引換証票を取得した場合、3年以下の有期懲役に処し、もしくは300万台湾元(約1400万円)以下の罰金を科し、またはこれらを併科します。
例えば、虚偽の情報、虚偽の身分、プラグインまたはチケットbotを用いてチケットを取得した場合には、刑事責任があります。
■交通などのチケット転売
また、社会秩序維持法第64条第2号でも、「交通機関利用券、レジャーチケットを、自己用ではなく購入し、利益を得る目的で転売した場合、3日以下の拘留または1万8000元以下の過料に処する」と定められています。
この部分は、興行入場券に限らず、すべての交通機関利用券、レジャーチケットの転売も処罰の対象範囲となります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。