第546回 小吃の一斉値上げ

新竹市の城隍廟の入り口付近でルーローハン等の軽食を販売する17軒の屋台が、LINEグループ等を通じて5台湾元(約24円)の値上げを決定し、2023年5月から一斉に5元の値上げをした行為について、公平交易委員会(公正取引委員会に相当)は、2024年11月6日、公平交易法(以下「本法」)で禁止される連合行為(カルテル)に該当すると認定しました(以下「本事例」)。

■カルテルと例外

本法で禁止される「連合行為」とは、「競争関係を有する同一の生産・販売段階の事業者」が、「契約」等による「合意をもって」、「商品またはサービスの価格」等を「共同で決定する」、または「その他相互に事業活動を拘束する行為」であって、「生産、商品の取引またはサービスの需給における市場の機能に影響を及ぼすに足りる行為」です(第14条第1項)。

連合行為は原則として禁止されますが、産業発展の促進に必要な行為など、本法第15条第1項各号に規定される条件を満たし、かつ公平交易委員会の許可を受けた場合は、例外的に許容されます。

■屋台に警告処分

本事例において、公平交易委員会が調査を行った際、屋台側は、販売する軽食は長い間値上げしていないが、油、電気、人件費、および原材料等の価格は上昇し続けたので、販売価格を値上げせざるを得なかったと主張しました。

公平交易委員会は、屋台の経営が困難であることは理解できるが、一斉に値上げをした行為は違法行為であると判断しました。しかし、営業規模が小さいこと等を考慮し、警告処分にとどめました。

■過料1億元超も

本事例では過料が科されませんでしたが、連合行為を行った場合、最高1億元の過料が科されます(本法第40条第1項)。さらに、情状が重大な場合は、前会計年度の売上高の10%以下の過料を科すことができるとされているため、1億元を超える過料が科される可能性もあります(同条第2項)。

このように、極めて高額な過料が科される可能性があるため、連合行為に該当し得る行為を行う際は特に注意が必要です。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。