第548回 広告のキーワードに競合他社名を使用するのは違法か

二大宿泊予約サイト(以下A社およびB社といいます)がキーワード広告において競合相手C社の事業者名を使用し、自社サイトのURLと並んで表示されるようにしていたことがありました。これは他人の努力の成果を搾取する公平性を欠く行為とみなされ、公平取引法第25条の「本法に別段の定めがある場合を除き、事業者は取引秩序に影響を与えるに足るその他の欺罔または明らかに公平性を欠く行為も行ってはならない」との規定に違反するものであるとして、両社はそれぞれ公平取引委員会により100万台湾元(約470万円)の過料を課されました。

■両社の違法行為

A社、B社はそれぞれインターネット検索エンジンにおいて、広告のためC社の名称をキーワードとして使用し、「キーワード挿入」機能を採用していました。

インターネット利用者が「C社」を検索した時に、「C社:遅く購入した場合も同じく最高8割引きの優待価格で購入できる」、「C社/多くのブロガーが足並みを揃えて推薦する」という見出しの広告が、それぞれA社、B社の公式サイトURLと並んで目に入るようになっており、ユーザーが当該広告をクリックすると、C社のサイトではなく、それぞれA社、B社の公式サイトに誘導されるようになっていました。

公平取引委員会は、「A社、B社の上記の広告方式では、他人の努力を利用して自己の商品またはサービスのプロモーションを行っており、C社と同じ系列であるまたは関連があると消費者を誤解させることで、もともとC社を検索しようとしていた消費者は、A社またはB社により表示された広告の見出しに惑わされたり、引きつけられたりして当該キーワード広告をクリックする可能性がある。これによりC社が潜在顧客を引きつける機会は減少し、ひいては他人の努力の成果の搾取を構成し、公平取引法第25条に違反する」と判断し、過料を課しました。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。