第555回 公益通報者保護法の制定
2024年12月27日、立法院で公益通報者保護法(中国語:公益揭弊者保護法、以下「本法」)が最終可決されました。総統による本法の公布後、本法の施行細則の検討等が進められ、本法は、公布の6カ月後から施行される予定です。
公益通報とは、特定の組織に属する者が、組織内部の不正行為を当該組織や行政機関等に通報することをいいます。本法は、台湾で初めて制定された公益通報者の保護に特化した規定です。
■民間企業は対象外
日本の公益通報者保護法の適用範囲には民間企業も含まれますが、台湾の本法の適用範囲は、公的機関、国営事業、および政府のコントロールを受けている事業のみで、すべての民間企業が含まれるわけではありません。この点について法務部(日本の法務省に相当)は、民間部門への影響を軽減しつつ、段階的に制度の深化を図るため、民間部門に対する各種の行政指導を通じて、民間部門が自主的に内部通報者制度を構築するよう柔軟に指導するとコメントしています。
本法により通報者に対して不利益な措置を講じた者が公務員の身分を有する場合、公務員懲戒法等に基づき懲戒等の処罰が科され、公務員の身分を有さない場合、5万台湾元(約24万円)以上500万元以下の過料が科されます(他の法律により重い処罰規定がある場合はその規定に従います)。
また、故なく通報者の身分を漏洩(ろうえい)した公務員は、6月以上5年以下の有期懲役に処し、30万元以下の罰金を併科することができます。また、公務員でない者が故なく通報者の身分を漏洩した場合、1年以下の有期懲役もしくは拘留に処し、または10万元以下の罰金を科し、もしくは併科することができます。
■通報者に報奨金
なお、勇敢な通報を奨励するため、通報により不法な事実が明らかになった場合、通報者に報奨金が支給されますが、公権力を行使したことで不法な事実を知り得た政府機構およびその所属人員(その配偶者および三親等内の親族)は支給の対象外とされました。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。