第558回 相続と剰余財産分配請求
日本と台湾のいずれであっても、被相続人(亡くなった方)に配偶者がいる場合、欠格事由(故意に被相続人を死亡させたことで刑に処された場合等)がある場合等を除き、原則として、配偶者は相続人になります。被相続人に子がいる場合、子は原則として第一順位の相続人になります。
■日台で異なる法定相続分
しかし、日本と台湾では、法定相続分(遺産の取り分)が異なります。日本では、被相続人に配偶者と子がいる場合、配偶者が2分の1を相続し、残りの2分の1を子が相続します。これに対して、台湾では、配偶者と子がその人数で等分します。例えば、被相続人に配偶者と子2人(子A、子B)がいた場合、日本では、配偶者が2分の1、子ABがそれぞれ4分の1を相続しますが、台湾では、配偶者と子ABがそれぞれ3分の1を相続します。
この部分だけを見ると、台湾では日本より配偶者の取り分が少ないように思われます。しかし、台湾では、後述する剰余財産の分配請求ができるため、必ずしも日本に比べて配偶者が不利になるわけではありません。
■剰余財産の差額を分配
剰余財産とは、法定財産制関係の消滅(離婚、一方の死亡等)時に、夫または妻の現存する婚姻後の財産から、婚姻関係継続中に生じた債務を控除した後の残額を指します。そして、双方の剰余財産に差がある場合、その差額を等分して分配しなければならないとされています(民法第1030条の1第1項)。
しかし、いかなる場合にも剰余財産の分配を認めるとかえって不公平な結果になりかねないので、裁判所は、配偶者の一方が婚姻生活に貢献もしくは協力していない場合、または等分の分配を不公平とするその他の事情がある場合、分配額を調整または免除することができます(同条第2項)。
なお、裁判所は、当該判断をするとき、婚姻期間中の家事労働、子の監護養育、家庭に費やした全体的な協力状況、同居および別居期間の長短、婚姻後の財産取得時期、双方の経済力などの要素を総合的に考慮しなければなりません(同条第3項)。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。