第561回 禁止医薬品過失輸入罪

2023年8月に禁止医薬品である「鹿鞭(ロクジン)」を含む貨物を無許可で輸入した者の刑事責任が問われた事件(以下、「本件」)について、2025年2月3日、台南地方裁判所は、禁止医薬品過失輸入罪(薬事法第82条)が成立するとし、拘留40日、執行猶予2年の判決を下しました。

■「過失」でも有罪が成立

薬事法第82条第1項では、禁止医薬品を輸入した者は、10年以下の有期懲役に処し、1億台湾元(約4億4700万円)以下の罰金を併科することができる旨が規定されています。また、同条第3項では、過失により第1項の罪を犯した者は、3年以下の有期懲役、拘留に処し、または1000万元以下の罰金を科す旨が規定されています。

つまり、禁止医薬品を輸入した場合、「故意」(わざと)ではなくとも、「過失」(不注意)があれば、同罪が成立します。

■医薬品扱い

本件の判決文によると、本件では、被告人が、事情を知らない国際貿易会社を通じて無申告の速達貨物1箱を輸入しました。しかし、調査の結果、製品の成分は漢方薬で、高麗人参、クコ、桑、黄精、鹿鞭が含まれていたところ、鹿鞭は衛生福利部食品薬物管理署の食品原材料整合検索プラットフォームに掲載されている食用原材料ではなく、医薬品として管理されるべきものでした。

このため、禁止医薬品過失輸入罪が成立すると判断されましたが、一時の判断ミスであることを考慮し、2年間刑の執行が猶予され、さらにその間保護観察を付けるとともに、法治観念の強化等を促進するため、法治教育課程(3回)に参加することが義務づけられました。また、輸入した貨物は没収されました。

司法院の判決文検索システムで検索すると、毎月数件は禁止医薬品過失輸入罪の有罪判決が出ているため、日本を含む海外のウェブサイトで購入した製品を台湾に輸入する場合は注意が必要です。また、同罪の疑いがある場合でも、起訴猶予となっている事例が一定数あるため、捜査機関から同罪の疑いをかけられた場合、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 福田 優二

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。