第563回 起業家ビザと投資居留ビザ
外国人の台湾での就労に関する居留事由について、被用者身分のビザのほか、起業も一つの選択肢になります。
■スタートアップの起業家ビザ
台湾政府は台湾への外国人起業家の呼び込みを奨励するため、「起業家ビザ」を開始しました。初回発給の期限は2年で、その後は起業実績に基づいて期限の延長を申請することができ、1回につき最長2年間延長されます。
申請条件は以下のとおりです。
1.ベンチャーキャピタルまたは政府が認可した対象から200万台湾元(約900万円)以上を調達している者。
2.台湾政府が認定したイノベーション園区やインキュベーターに1年以上入居しており、かつ推薦を獲得している者。
3.特許権、意匠権または専門技能に関する証明を取得している者。
4.植物品種権または動物命名登記を自ら取得している者。
5.代表的な起業もしくはデザイン競技会に参加して受賞したことがある、または台湾政府が奨励する外国人起業家台湾誘致プロジェクト計画を申請して承認を受けている者。
6.代表的な国際ファッションショー、映画祭、国際ファッション賞に入賞または受賞したことがある者。
7.その他、台湾政府機関の認定または推薦を受けた、イノベーション能力を有している者。
8.「イノベーション能力を有するスタートアップ事業認定原則」に適合する事業を設立しており、責任者、支配人または主管を務め、かつ少なくとも100万元を投資している者。
■大口投資家の投資居留ビザ
起業家ビザの条件を満たしていない場合、投資方式によっても居留資格を取得することができます。許可を受けて台湾企業に20万米ドル以上投資すれば、2人分の居留ビザを申請することができ、投資額が50万米ドル増えるごとに、さらに1人分の居留ビザを追加申請することができ、最高7人分まで追加発給されます。
■自ら起業したい場合
被用者の身分で台湾に居留することを希望せず、自ら起業したい場合、起業家ビザまたは投資居留ビザはいずれも選択肢の一つとなります。
申請プロセスを円滑に進められるよう確保するため、関係書類を事前にきちんと準備した上で、専門家に相談することをお勧めします。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。