第44回 日本と台湾における類似商号規制の違い
日本の場合、旧商法下では、同一市町村において他人が登記した商号について、同種の営業について登記することが禁止されていた(類似商号規制)。そのため、会社を設立する場合には、事前に、同一市町村における商号の調査が必要であった。
しかし、会社法の改正により、類似商号規制は廃止されたため、商号と本店の所在地がともに同一でない限り、既存の会社と同一または類似のものであっても登記は可能になった。そのため、会社を設立する場合には、同一の本店所在地に同一の商号の会社があるかどうかの調査のみが必要となった。
但し、現行法の下でも、著名性を有する他人の商号と同一もしくは類似した商号を使用した場合、または不正の目的をもって、他の会社と誤認させる商号を使用する場合には、不正競争防止法、会社法等に違反する可能性がある。また、「銀行」等、法令により使用が禁止されている商号もある。
これに対し、台湾の会社法では、同種の業務を行う場合には、台湾全域において、同一の名称(商号)を使用することはできないとされている(会社法第18条第1項)。また、会社の名称(商号)は、漢字で表記される必要があるとされている。
次に、会社法の所管機関である経済部に「会社名称および営業項目調査の事前審査手続」(会社設立手続きにおける最初の手続き)を申請することによって、使用予定の会社名が使用可能かどうかを確認することができる。このときに、既存会社の会社名と重複していることなどを理由として、使用不可と判断されることを避けるために、複数の社名(一般的には5つぐらい)について審査手続きを受けることも少なくない。
類似商号の規制については、日本の過去の規制及び現在の規制、並びに台湾の現在の規制について、混同しやすい点であるので、注意が必要である。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。