第17回 会社の設立登記、変更登記事項に対する主管機関の審査

最高行政法院は、2013年1月17日に13年判字第16号判決を下し、会社の設立登記、変更登記事項に対する主管機関による審査は、会社が提出した申請資料に対し形式的な審査を行うだけでよく、会社法の規定に合致してさえいれば登記を許可しなければならないことを強調した。

同事件の被告は台北市政府で、原告は台湾のある有名旅客輸送会社の前董事長。事件の概要は以下の通りだ。

瑕疵による決議違法を主張

当該旅客輸送会社は11年に臨時株主総会を開催し、改選の結果、董事長、董事や支配人などが新たに選任された。原告はこれに伴い更迭された。その後、新任の董事長は台北市政府に対して新董事長、董事、支配人などの登記事項変更の申請を行い、台北市政府は関連資料を審査の上、変更登記を許可した。

しかし原告は、当該旅客輸送会社の臨時株主総会開催に当たり、一部の株主が適法な開催通知を受け取っていないため、そこでなされた改選決議は違法であり、よって台北市政府が行った変更登記も違法な登記であり取り消されるべきと提訴した。

最高行政法院は審理の上、以下の通り判断した。

「会社法第387条・第388条などの規定によれば、会社の登記については『準則主義』が採られている。つまり、主管機関は会社が提出した書面資料に対し形式的な審査を行い、法令の規定に合致してさえいれば、その登記を許可しなければならない。

会社の設立登記または変更登記の真実性および法令に違反する場合の法律効果については、司法機関により認定される範囲である。本件において、原告が争っている臨時株主総会招集の問題は、瑕疵(かし)があったとしても、別途、裁判所に当該株主総会決議取消の請求をしなければならず、当該決議が取り消されるまでは依然として有効である。台北市政府が関連資料に基づき登記を許可した以上は違法ではないため、原告敗訴の判決を下す。」

実務上、主管機関が会社の登記事項について詳細な調査を行わないことがあるため、台湾の会社と取引を行う場合は、その会社の登記資料を唯一の判断資料としないよう注意しなければならない。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。