第108回 労働基準法および 労働者退職金条例の改正について

2015年7月1日、総統令により労働基準法第58条、および労働者定年退職金条例第29条の改正条文が公布され、これにより、今後は新制度(05年7月1日以降の制度)、または旧制度(05年6月30日以前の制度)のいずれに基づき請求する定年退職金であっても、指定口座に預け入れることができ、また口座内の預金を相殺、差し押さえ、担保に供する、または強制執行の対象にしてはならないとされた。

新旧どちらの制度でも保護

今回の改正に関する労働部の説明は次の通りである。

これまで、新制度に基づき請求する場合のみ、「労働者が請求する定年退職金および定年退職金の請求権について、譲渡し、差し押さえ、相殺または担保に供してはならない」と規定され、労動基準法第55条の規定(旧制度)に基づき請求する場合、これらの制限は適用されなかった。

今回改正された労動基準法第58条、労働者定年退職金条例第29条では、労働者の定年退職の際の権利を保護するために、新制度または旧制度のいずれに基づく定年退職金かにかかわらず、労働者は証明文書を添付すれば、金融機関に預入専用口座を開設することができ、また当該専用口座内の預金を、相殺、差し押さえ、担保に供する、または強制執行の対象としてはならないと規定された。これにより、労働者が受け取る定年退職金が口座に預け入れられた後に、差し押さえや相殺されることが避けられ、労働者の定年退職後の経済面、生活面の保護が図られることとなった。

保険料の未納金は優先的に弁済

また、同日に労働者保険条例第4条、第17条の1の改正条文も公布されたが、改正点は次の通りである。

保険加入組織が期限を過ぎても労働者保険の保険料および延滞金を納付しない場合、労働者保険局は労働者保険条例第17条第2項の規定に基づき、行政執行により未納金を処理することがあるが、執行過程において保険加入組織が破産、再生、または解散により清算された場合、現行の保険料および延滞金は普通債権に該当するため、その他の債権者と共に保険加入組織の残余財産の分配に参与できるのみで、未納金を弁済することができないというリスクがこれまでにはあった。

そこで、未納金が弁済できないという問題を解決し、労働者保険財務を健全化し、かつ被保険者全員の権利を保護するため、今回改正された労働者保険条例第17条の1では、労働者保険の保険料および滞納金は普通債権より優先して弁済されると定められた。


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執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

(本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに執筆した連載記事を転載しております。)